アデノウイルス感染症とはどんな病気か?激しい咳ほか多彩な症状と対策を解説
子どもがいる家庭では、アデノウイルス感染症はよく耳にする病気です。しかし、これは子どもだけの病気ではなく、大人もかかることがあります。
アデノウイルスは非常に感染力の強いウイルスです。ですから、家庭内での感染対策はもちろん、流行している時期には咳の飛沫などによる感染を、できる限り避けるよう努める必要があります。
この記事では、アデノウイルスに感染した時に現れる症状や、感染予防対策について解説します。
目次
1.アデノウイルス感染症とは
アデノウイルスは、風邪のような咳や発熱のほか、目や消化器、泌尿器などにも症状を引き起こすウイルスです。
【参考情報】『Adenoviruses』CDC
https://www.cdc.gov/adenovirus/index.html
俗に「プール熱」と呼ばれる咽頭結膜熱や、「はやり目」と呼ばれる流行性角結膜炎も、アデノウイルスに感染して発症する病気です。
【参考情報】『咽頭結膜熱とは』国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/323-pcf-intro.html
ウイルスにはさまざまな型があり、感染する型によって症状や重症度が異なります。型が多いため、一度感染しても別の型のアデノウイルスに感染することがあります。
アデノウイルスは、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、ウイルスが付着したものに触れる接触感染によって広がります。
感染後の潜伏期間は通常5~7日ほどですが、とても感染力が強いため、症状が出る前から感染を広げることがあります。
感染拡大を防ぐため、学校保健安全法では出席停止の期間が定められています。咽頭結膜熱は、主な症状がなくなってから2日間は出席停止が必要です。流行性角結膜炎は、医師が感染のリスクがないと判断するまで学校に行けません。
【参考情報】『学校感染症による出席停止について』北海道薬剤師会
http://www.doyaku.or.jp/guidance/data/R2-10.pdf
2.アデノウイルス感染症の症状
アデノウイルスは、感染した体の部位によって異なる症状を引き起こします。以下、感染時の症状と特徴を説明します。
2-1.発熱
38℃以上の熱が3~5日ほど続き、その後自然に下がっていくことが多いです。乳幼児は、高熱により脱水症状を起こす危険もあるので、水分をこまめに与えてください。
2-2.のどの症状
ウイルスが扁桃腺やリンパ節で増殖すると、扁桃腺の腫れやのどの痛みが現れます。扁桃腺の表面に、白苔(はくたい)と呼ばれる白い膿がつくことがあります。
2-3.咳
扁桃周辺で炎症が起こると、炎症の刺激で咳が出ます。咳は激しく、なかなか止まらないことも多く、ほかの症状が治まってもしばらく続くことがあります。
また、感染する型によっては肺炎や気管支炎が引き起こされ、それに伴って咳が長引いたり、呼吸器の症状が悪化することがあります。
2-4.目の症状
目に感染すると、目が充血して目やにが出ます。炎症が強い場合は、痛みを感じることもあります。
充血は、白目が濃い赤色に見えるほど激しいことがあります。目やにの量は多く、朝、目が覚めると、大量の目やににより目が開かないこともあります。
2-5.鼻の症状
ウイルスが鼻の粘膜に付着すると、防御反応として鼻水や鼻づまりなどが現れます。
2-6.胃腸の症状
アデノウイルスに感染して胃腸炎になると、下痢や腹痛、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。特に、乳幼児に多い症状です。
下痢や嘔吐が続くと、脱水の恐れがあるため、こまめに水分を補給しましょう
2-7.その他
アデノウイルスにより出血性膀胱炎が引き起こされると、真っ赤な血尿や排尿時の痛み、頻尿などの症状が現れます。
肝炎が起こることもありますが、ほとんどは一時的なもので、重症化することはめったにありません。
【参考情報】『アデノウイルスの種類と病気』国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/adeno-pfc-m/2110-idsc/4th/4326-adeno-virus-page2.html
3.検査と治療
アデノウイルス感染症の検査と治療について解説します。
3-1.検査
主に、抗原定性検査という方法で検査します。のどや目など、現れている症状によって検体を採取する場所を決め、綿棒でこすって体液などの検体を採取して調べます、採取後10分程度で結果が分かります。
3-2.治療
アデノウイルスには、インフルエンザやコロナのような抗ウイルス薬はありません。
そのため、基本的には解熱剤や咳止め薬、点眼薬などを用いて症状を和らげる対症療法が行われます。
4.感染予防の対策
アデノウイルスに感染したとわかったら、あるいは疑いのある時は、家族や周囲の人に移さないよう対策を講じましょう
4-1.手洗い
感染対策の基本は、流水と石けんでの手洗いです。アルコールによる消毒は、ほとんど効果がないので注意しましょう。
4-2.咳エチケット
咳エチケットは、マスクの着用とともに、咳やくしゃみが飛ぶのを防いで、感染を広げないためのルールです。
咳やくしゃみが出そうになったら、手で口を押さえるのではなく、マスクやハンカチ、ティッシュで口を覆いましょう。それらがないときは、服の袖の内側で口を覆っても構いません。
手で口を押さえてしまうと、手にウイルスが付着します。そして、ウイルスが付着した手で触れた場所が汚染され、ウイルスが広がってきます。
4-3.タオルの共有を避ける
感染者が使用したタオルには、ウイルスが付着している可能性が高いため、患者は家族や同居者とタオルを共有するのは避けましょう。
汚染されたタオルなどの消毒が必要な場合は、0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを使用するといいでしょう。
【参考情報】『消毒法』日本眼科学会
https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/adenovirus05.pdf
タオルだけでなく、感染者の使用した食器なども、共有しないようにしましょう。
5.激しい咳が長引く他の病気
アデノウイルス感染症以外にも、激しい咳が長引く病気があります。似たような症状がある病気を紹介しますので、参考にしてください。
5-1.マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ・ニューモニエという特殊な病原体によって肺炎が起こる病気です。発熱や全身倦怠感など風邪とよく似た症状が現れた後、激しい咳が3~4週間ほど続きます。
5-2.百日咳
百日咳菌に感染して起こる呼吸器感染症です。風邪のような症状から始まり、その後、特徴のある激しい咳が現れます。咳は長期間にわたって続き、治まるまで100日程度かかります。
5-3.クループ症候群
主にウイルス感染によってのどの奥が狭くなり、咳や呼吸困難、声のかすれなどが現れた状態です。幼い子どもに多く見られますが、成人も発症することがあります。
咳に特徴があり、犬が吠えるような「ケンケン」という音や、オットセイの鳴き声のような音がします。
6.おわりに
アデノウイルスの感染力は非常に強く、症状も多彩です。感染を予防するには、手洗いやうがいといった基本的な衛生習慣を実践することが重要です。
特に、免疫力の低下している方や高齢者、幼い子どもたちの健康を守るために、健康な大人が率先して予防策を徹底しましょう。
疑わしい症状があって心配なときは、内科や耳鼻咽喉科、お子さんは小児科を受診してください。
他の症状が治まっても、咳が2週間以上長引いている場合は、病気をきっかけに咳喘息など別の呼吸器疾患を発症した疑いもあるので、呼吸器内科の受診を検討してください。