その「いびき」「昼間の眠気」睡眠時無呼吸症候群の初期症状では?
・自分のいびきで目が覚める
・ちゃんと寝ているはずなのに寝た気がしない
・日中、猛烈な眠気に襲われる
このような悩みが続いているなら、睡眠時無呼吸症候群という病気のせいかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群になると、自分では気づかなくても寝ている間に呼吸が止まり、眠りが浅くなります。
また、これらの症状により、日常生活や健康面にさまざまな支障が出ることがわかっています。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群の初期症状について解説します。気になる症状がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に空気の通り道である気道が狭くなることで、呼吸が止まったり、浅くなったりすることを繰り返す病気です。
医学的には、就寝中に10秒以上呼吸が止まったり、呼吸が弱くなったりする状態が、1時間あたり平均5回以上繰り返されることと定義されています。
この病気になると、深い睡眠をとることができず、熟眠感が得られなくなります。
また、呼吸が妨げられることにより、体内の酸素が不足すると、酸素を補うために心臓の働きが強くなり、心臓や血管に負担がかかります。
【参考情報】『Sleep apnea』Mayo clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sleep-apnea/symptoms-causes/syc-20377631
2.睡眠時無呼吸症候群の初期症状
睡眠時無呼吸症候群になっても、疲れやストレス、加齢のせいで調子が悪いと勘違いしている人は少なくありません。
以下に紹介するサインを見逃さず、初期のうちに対策を講じましょう。
2-1.いびき
いびきは、睡眠時無呼吸症候群でよくみられる症状のひとつです。
健康な人でも、疲れているときやお酒を飲み過ぎたときなどにいびきをかくことはありますが、毎晩のように激しいいびきがあるのなら、睡眠時無呼吸症候群の疑いが強いです。
あまりに大きな音なので、自分のいびきで目が覚めてしまう人もいますが、たいていの人は、自分がそんなに激しいいびきをかいているとは気づかないようです。
一緒に寝ている家族やパートナーは、安眠を妨げられていることが多いので、いびきを指摘されたら、しっかりと事実を受け止めてください。
いびきが録音できるアプリもあるので、そちらを利用するのもいいでしょう。
2-2.夜中に目が覚める
睡眠時無呼吸症候群になると、呼吸が妨げられ息苦しくなるので、夜間に目が覚めることが多くなります。
息苦しさが原因で、寝汗をかいたり、悪夢を見ることもあり、さらに睡眠が妨げられるという悪循環に陥る人もいます。
息苦しさのあまり、口を開けて寝ている人もいます。すると、のどが渇くので、のどの渇きで目が覚めることもあります。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、夜間にトイレに行く回数が増える傾向があります。これは、体内の酸素不足を補うために血液の量が増えることで、余分な水分を体外へ排出する仕組みが働くからです。
2-3.起床時の症状
睡眠時無呼吸症候群になると、起床時にも以下のような症状が現れます。
・頭痛
・倦怠感
・口の中やのどの渇き
・のどの違和感や痛み
頭痛や倦怠感は、無呼吸の影響で体内の酸素濃度が低下することや、十分な睡眠がとれなかったことにより生じます。
また、鼻からの呼吸が妨げられると、無意識のうちに口を開けてしまうため、口の中が乾燥し、のどが渇きます。
のどが乾燥した状態で激しいいびきをかいていると、のどの粘膜に負担がかかるため、のどの痛みや違和感を覚えることもあるでしょう。
2-4.日中の症状
睡眠時無呼吸症候群の影響により、十分な睡眠が得られないと、日中も以下のような症状が現れます。
・昼間の強い眠気
・集中力の低下
・倦怠感や疲労感
これらの症状があっても、「少し疲れているだけ」と思いがちですが、睡眠時無呼吸症候群の影響でこのような症状が出ているなら、休みをとっても、就寝時間を早めても、症状は改善しません。
3.睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群は、閉塞型と中枢型の2つに分けられます。患者さんの多くは閉塞型です。
<閉塞型の原因>
・肥満
・あごの骨格
・扁桃腺やアデノイドの肥大
<中枢型の原因>
・心臓や脳、神経の病気
3-1.肥満
肥満体型の人は、のど周辺にも脂肪がついているので、気道が脂肪で圧迫され狭くなります。
また、舌にも脂肪がついているため、その重みで舌が気道に落ち込みやすくなります。すると、気道がふさがれて狭くなるので、睡眠中の呼吸が妨げられます。
3-2.あごの骨格
日本人を含むアジア系の民族には、あごが小さい人が多いのですが、あごが小さいと、舌根が気道に落ち込むやすくなるため、気道が舌でふさがれて狭くなります。
そのため、あごが小さい人は、やせていても睡眠時無呼吸症候群を発症しやすい傾向があります。
【参考情報】『Is sleep apnea risk higher for Asians?』AASM SleepEducation
https://sleepeducation.org/sleep-apnea-risk-higher-asians/
3-3.扁桃腺、アデノイドの肥大
扁桃腺肥大やアデノイド肥大があると、やはり気道が狭くなるので、睡眠時無呼吸症候群になることがあります。
特に、子どもの睡眠時無呼吸症候群は、扁桃腺やアデノイドが大きいため発症することが多いです。
3-4.心臓や脳、神経の病気
脳の中には、呼吸を調節している「呼吸中枢」という箇所があります。この呼吸中枢の働きが、以下のような病気により妨げられると、睡眠中に無呼吸状態が発生します。
・心不全
・脳卒中
・パーキンソン病
中枢型の睡眠時無呼吸症候群では、いびきは出ないことが多いです。
4.睡眠時無呼吸症候群の検査と治療
睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるときに行う検査と治療の方法を紹介します。
4-1.検査
検査には、簡易検査と精密検査があります。簡易検査の結果、さらに詳しい検査が必要だとわかったら、精密検査を追加します。
精密検査は、医療機関や検査施設に一泊して行うことが多いのですが、当院では入院せずに自宅で検査を受けることも可能です。
◆「呼吸器内科で睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができます」>>
4-2.治療
主に、CPAPという医療機器を用いて睡眠中の呼吸をサポートする治療を行います。
あごが小さい人はマウスピース、中枢型の人はASVという医療機器を用いることがあります。扁桃腺やアデノイド肥大が原因の場合は、手術で取り除くこともあります。
5.治療のメリット
睡眠時無呼吸症候群を治療すると、以下のようなメリットがあります
5-1.いびきの軽減
治療により睡眠中の呼吸が正常になれば、いびきが軽減されるでしょう。
いびきが軽減されると、一緒に寝ている人の睡眠を妨げることがなくなり、旅行や出張の際にも、同伴者に気を遣わずに済みます。
5-2.熟睡感が得られる
睡眠の質量が上がるので、朝、さわやかな気分で目を覚ますことができます。疲れや体のだるさも取れ、一日を気持ちよくスタートすることができます。
5-3.仕事のパフォーマンスが上がる
睡眠不足が解消され、熟睡感が得られることで、昼間の眠気が軽減します。そのため、仕事や勉強に集中でき、効率がよくなります。
5-4.合併症の予防
睡眠時無呼吸症候群が進行すると、以下のような合併症が現れる恐れがあります。
・高血圧
・心筋梗塞
・糖尿病
・脳卒中
しかし、初期のうちに病気に気づき、治療を開始すれば、命にかかわる合併症のリスクを減らすことができます。
6.おわりに
「激しいいびき」「昼間の猛烈な眠気」は、睡眠時無呼吸症候群のサインです。これらの症状が続いているなら、検査と治療ができる病院を探して受診してください。
初期のうちに治療を開始すれば、いびきや眠気も治まって体調がよくなってきます。しかし、気づかずに放っておくと、病気が進行して重篤な合併症が生じる恐れがあります。
心身の健康を整え、充実した毎日を送るためにも、睡眠を妨げる原因には早めに対処しておきましょう。