喘息治療に用いる気管支拡張剤「テオロング」の特徴と効果、副作用
テオロングは、主に喘息の治療に用いる気管支拡張薬で、気管支炎やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療にも使われます。
この記事では、テオロングの使い方や効果、副作用などについて解説します。初めて使う方も、使っているうちに疑問点が出てきた方も、ぜひ最後までお読みください。
1.テオロングとはどのような薬か
テオロングは、テオフィリンという成分を主とした薬です。気管支を広げたり、呼吸中枢を刺激することで、咳や息苦しさを改善します。
私たち人間の体内には、気管支の筋肉を緩める役割を持つcAMP(サイクリックAMP)という物質があります。この物質は、ホスホジエステラーゼ(PDE)という酵素の働きにより、異なる物質に変換されてしまいます。
テオフィリンは、この酵素をブロックすることでcAMPを増加させ、cAMPの力を強めます。
テオロングは、治療有効域が狭い薬剤であるため、適切な服薬管理が必要です。
「治療有効域が狭い」とは、薬剤の成分が有効である域と中毒域が近いことをいいます。
つまり、薬剤の血中濃度が高くなれば、その効果は強くなる反面、濃度が過ぎれば副作用や害が出やすくなるので、定期的に血中濃度を測定し、コントロールしていく必要があります。
【参考情報】『Theophylline』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK519024/
2.テオロングの使い方
テオロングは、通常成人は1回につき2錠(200mg)、小児は1回1錠か2錠(100〜200mg)を、1日2回、朝と就寝前に、水かぬるま湯と一緒に飲みます。
ただし、テオロングには50mg、100mg、200mgと3種類あり、種類によって服用する数は違ってくるので注意してください。
なお、年齢や持病の有無により、用法・用量が変わることがあります。持病がある人は、診察の際に医師に報告しましょう。
特に乳幼児は、テオフィリンの血中濃度が上がりやすいため、慎重に投与しなければなりません。
【参考情報】『The changing role of theophylline in pediatric asthma』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8116518/
3.テオロングの副作用
テオロングの副作用には、以下のようなものがあります。
・発疹
・頭痛
・めまい
・食欲不振
・倦怠感
重大な副作用としては、けいれんや意識障害があります。小児、特に乳幼児は、成人よりけいれんを起こしやすいため注意が必要です。
これまでてんかんになったり、けいれんを起こしたことのある子どもは、テオロングを服用すると、けいれんが起きやすい傾向があります。
また、子どもが発熱時に服用すると、副作用が出やすくなります。風邪などで熱が出た時は、医師と相談しながら、一時的に量を減らすこともあります。
お子さんがテオロングを服用する場合、保護者は医師の説明をよく聞き、内服中は注意深く観察してください。
4.使用上の注意点
テオロングは、過去にテオロングまたはキサンチン系薬剤で重い副作用が現れた人は、使ってはいけない薬です。
【主なキサンチン系薬剤】
・ジプロフィリン
・モノフィリン
・アミノフィリン
・ユニフィル
・テオドール
過去にテオロングまたはキサンチン系薬剤による副作用があった人は、必ず医師に伝えましょう。
テオロングは、ほかの薬と一緒に服用すると、効果が減ったり、逆に効果が強く出過ぎてしまうことがあります。
病院を受診する際は、お薬手帳を持参して、内服中の薬を医師に伝えましょう。お薬手帳を持っていない人は、内服中の薬を、用法・用量が記載されている薬袋に入った状態で持参しましょう。
テオロングは、体の中で徐々に薬剤が放出され、薬の効果が長く続くように設計されている「徐放性製剤」というタイプの薬です。
そのため、噛み潰してしまうと、薬の効果が急激に現れてしまうことがあります。特に、お子さんが噛み砕いてしまわないよう注意してください。
【参考情報】『徐放性製剤の粉砕投与』日本医療機能評価機構
https://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_158.pdf
テオロングの成分であるテオフィリンには、カフェインと似たような作用があるので、コーヒーやチョコレート、エナジードリンクなどカフェインが含まれた飲食物を多く摂ると、副作用が現れることがあります。
また、セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)というハーブを摂ると、薬の効果が弱まることがあるので避けてください。
【参考情報】『St. John’s wort』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements-st-johns-wort/art-20362212
テオロングは、タバコの影響を受けやすい薬です。内服中に禁煙を始める、または喫煙を始めるかもしれないという方は、必ず医師に相談しましょう。
妊婦または妊娠の可能性がある方は、症状を診ながら薬剤の投与について医師が判断する必要があるため、必ず医師に相談してください。また、薬剤服用中は、授乳を避けてください。
【参考情報】『Asthma During Pregnancy』Asthma and Allergy Foundation of America
https://www.aafa.org/asthma-during-pregnancy/
テオロングは、喘息の発作を抑える薬ではありません。息苦しさや咳を伴う喘息の発作が起きた場合は、医師から処方された発作治療薬(リリーバー)を使いましょう。
テオロングは、長期間内服することで、徐々に本来の効果が現れてくる薬です。症状が良くなったからといって自己判断で薬を止めたり減らしたりせず、決められた通りに使い続けることが大切です。
5.テオロングの薬価
テオロングの薬価は以下の通りです。
・テオロング錠50mg 5.9円
・テオロング錠100mg 8.7円
・テオロング錠200mg 12.9円
テオロングの代わりとなるジェネリック医薬品は「テオフィリン徐放錠」です。
【ジェネリックの参考薬価】
・テオフィリン徐放錠50mg「日医工」 5.9円
・テオフィリン徐放錠50mg「サワイ」 5.9円
6.おわりに
テオロングと同じように、テオフィリンを主成分とした薬には、以下のものがあります。
テオロングは、血中濃度の個人差が大きい薬なので、処方にあたっては、医師の専門的な知識や経験が必要となります。
医師は、患者さんの年齢や状態に合わせて喘息の治療薬を処方していますが、もし「薬が合わない」「飲みにくい」という悩みがあれば、相談してみましょう。