喘息は月経周期の影響で悪化することがあります
月経により女性ホルモンのバランスが変化することで、だるさやイライラなどの体調不良に悩む方は多いでしょう。
意外かもしれませんが、喘息も月経の影響により悪化して、咳や息苦しさなどの症状が強く出ることがあります。
この記事では、喘息と月経の関連性、そして適切な治療方法について詳しく解説します。月経周期が喘息症状に与える影響に気づいた方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.喘息とは
喘息とは、空気の通り道である気道が慢性的な炎症を起こして狭くなり、咳や息苦しさなどの呼吸器症状が現れる病気です。
喘息の原因は、アレルギー性と非アレルギー性の2つに分けられます。
アレルギー性は、ダニやカビなどアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)に反応して気道の炎症が引き起こされます。
一方、非アレルギー性は、過労やストレス、呼吸器感染症など、アレルゲン以外の原因が引き金となって発症します。
炎症により過敏になった気道は、冷たい空気や煙、強いにおいなど、さまざまな刺激に敏感に反応し、症状が現れます。
喘息と診断されたら、吸入ステロイド薬をはじめとした薬剤による治療を続けるとともに、発作を引き起こす原因となるアレルゲンや刺激を、できるだけ避けて生活することが大切です。
2.月経の仕組み
月経(生理)は、女性に妊娠が起きなかった場合に、古くなった組織を体外へ排出するためのプロセスです。周期は通常、約28日です。
卵巣から卵が放出されると、妊娠に備えて子宮内膜が厚くなります。ここで妊娠がない場合、子宮内膜は必要なくなるので剥がれ落ち、出血を伴い体外へと排出されます。
月経周期は、卵巣から分泌されるホルモンと、脳下垂体から分泌されるホルモンの変動によって繰り返されています。
これらのホルモンの影響で、月経中や月経前には、痛みや不快感が生じることがあります。
【参考情報】『Menstrual Cycle』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/10132-menstrual-cycle
3.なぜ、生理前に喘息の症状が悪化するのか
月経による心身の変化は、喘息の症状を悪化させることがあります。その理由を説明します。
3-1.ホルモンバランスの影響
喘息の女性のうち、月経によって喘息の悪化を認める人は30~40%程度いると言われています。
そのメカニズムは完全には解明されていませんが、一部の研究によれば、月経によって女性ホルモンのバランスが崩れることで気道の炎症に悪影響が及び、喘息の悪化につながる可能性があると指摘されています。
【参考情報】『Perimenstrual asthma: A syndrome without known cause or cure』Journal of Allergy and Clinical Immunology
https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(03)01714-7/fulltext
3-2.むくみ
月経前は女性ホルモンの影響により、体の中に水分が溜まりやすくなります。すると、肺の中に水分が溜まったり、気道がむくんで狭くなったりするため、喘息の悪化につながります。
むくみが強いときは、利尿作用がある薬を用いることもあります。
【参考情報】『Water retention: Relieve this premenstrual symptom』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/healthy-lifestyle/womens-health/in-depth/water-retention/art-20044983
3-3.PMSの影響
月経前症候群(PMS)とは、月経の数日前から現れる身体的・精神的な症状のことです。
【主な症状】
・頭痛
・腹痛
・イライラ
・眠気
【参考情報】『月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)』日本産科婦人科学会
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13
人によっては、月経前症候群(PMS)の影響を受け、喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患の症状が悪化することもあります。
また、喘息はストレスでも悪化すると言われています。そのため、生理前のイライラや体調不良などのストレスも、悪化の引き金となります。
4.月経による喘息の悪化を予防する対策
月経のたびに症状の悪化を繰り返している人は、喘息のコントロールがうまくできていない可能性があります。
以下、月経による喘息の悪化を防ぐ方法を説明します。
4-1.基本的な治療の継続
喘息の治療により症状が改善しても、病気が治ったわけではありません。症状が出なくなっても気道の炎症は続いているため、処方された薬を毎日服用し、気道の炎症を抑えることが大切です。
発作が出なくなっても、吸入ステロイド薬をはじめとしたコントローラー(長期管理薬)を医師の指示通りに服用し、症状をコントロールしていきましょう。
発作の時だけ薬を服用しているのでは、喘息は改善できません。日々の治療を続けることにより、月経やストレスの影響があっても、悪化を最小限に抑えることができます。
4-2.発作治療薬(リリーバー)の準備
月経前症候群やホルモンバランスの影響により、喘息の症状が急に悪化することがあります。
このような場合、発作を起こす恐れがあるので、発作治療薬(リリーバー)を手元に用意しておきましょう。
発作が起きた際に、速やかに服用できるように、発作治療薬の使い方も事前に調べておきましょう。
4-3.ロイコトリエン受容体拮抗薬の検討
月経前は、炎症を起こす体内物質であるロイコトリエンが増加しやすくなります。
そのため、ロイコトリエンの働きを抑えるロイコトリエン受容体拮抗薬を服用すると、症状が和らぐ可能性があります。
【主なロイコトリエン受容体拮抗薬】
・オノン
ロイコトリエン受容体拮抗薬には気管支を広げる作用があり、喘息による咳や息苦しさを軽減するはたらきがあります。
4-4.産婦人科でPMSについて相談する
PMSの症状がつらい人は、産婦人科で相談し、適切な治療を受けましょう。
症状が重い人は、無理をして我慢する必要はありません。医学の力を利用して、不快な症状をできるだけ緩和しましょう。
PMSの治療を行うことで、ホルモンバランスの影響による喘息の悪化を予防できる可能性が高まります。
【参考情報】『教えて!よしかた先生PMS編』未病女子navi|神奈川県
https://joshi.me-byo.com/dryoshikata/pms.html
5.おわりに
月経によるホルモンの変動は、喘息の症状を悪化させる可能性があります。
月経周期の変動に敏感なため、喘息の症状が悪化しやすい人は、必要だと感じたら、産婦人科でPMSについて相談するのもいいでしょう。
同時に、吸入ステロイド薬をはじめとした薬を毎日忘れずに服用し、喘息をコントロールしていきましょう。