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いびきは何科を受診する?受診の目安と病院の選び方

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年08月18日

いびきには、心配のないものと治療が必要なものがあります。

軽いいびきをたまにかく程度なら心配ありませんが、音が激しかったり、毎晩のように出ているのなら、体に負担がかかっている恐れがあります。

また、家族から「うるさい」と指摘されたり、寝室を共にするのを嫌がられるようなら、人間関係にも影響が及んでいるでしょう。

この記事では、いびきを心配な人が病院を受診する目安や、何科を受診したらいいのかを説明します。

1.いびきとは


いびきは、空気の通り道である気道が狭くなると発生します。狭くなった気道を空気が勢いよく通り抜けるとき、気道の粘膜が振動して音が出るのです。

【参考情報】『Snoring』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/snoring/diagnosis-treatment/drc-20377701

いびきは、肥満体型の人や中年男性の悩みというイメージが強いかもしれません。しかし、年齢や性別、体型を問わず悩んでいる人は多いです。

女性はホルモンの影響で、出産や更年期がきっかけとなり、いびきが出るようになることもあります。

◆「女性のいびきの原因は?ホルモンの影響と対処法を解説」>>

◆「いびきと肥満の関係」について>>

2.いびきで病院を受診する目安


いびきの悩みで病院の受診を検討している人は、下記の目安を参考にしてください。

2-1.心配のないいびき


以下のような時に出るいびきは一過性のことが多いので、少し様子をみてもいいでしょう。

 ・ひどく疲れた時

 ・ストレスが強いとき

 ・お酒を飲み過ぎたとき

疲れやストレスが強いと、心身の回復を促そうとして筋肉がゆるみます。すると、気道も筋肉がゆるんで狭くなるので、いびきが出やすくなります。

これらのいびきは、疲れやストレスが軽減されれば出なくなります。

お酒を飲むと、アルコールの作用でのど周囲の筋肉がゆるみます。また、舌の筋肉もゆるんでのどに落ち込むため気道が狭くなり、いびきが出ることがあります。

お酒が原因のいびきは、アルコールが抜ければ出なくなるので、寝る4時間前には飲酒を終えるといびきが予防できます。

【参考情報】『お酒と睡眠 ~「眠るための飲酒」は避けましょう~』横浜市
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/kenko-iryo/kokoro/kokorojyouhou/column/20211013162348942.html

2-2.改善が期待できるいびき


以下の条件に当てはまる人のいびきは、生活習慣の見直しなどで改善する可能性があります。

 ・喫煙者

 ・睡眠薬を常用している

 ・肥満体型

タバコに含まれる化学物質は、気道の炎症を引き起こします。そのため、喫煙によりのどが腫れてしまうと、いびきをかきやすくなります。喫煙の習慣がある人は、禁煙によって気道の炎症が治まれば、いびきが改善する可能性があります。

睡眠薬の中には、筋肉を緩める作用を持つ薬があります。睡眠薬が必要な人は、筋肉が緩まないタイプの睡眠薬に替えると、気道の筋肉の緩みを防いでいびきが改善する可能性があります。

肥満体型の人は、のど周囲にも脂肪がつくことで、気道が脂肪で圧迫され狭くなります。そのため、体重を落としてのど周囲の脂肪が減ると、気道が広がりいびきが出にくくなります。

◆「いびきの原因は肥満?改善法と危険なサインを知っておこう」>>

2-3.未治療のままだと心配ないびき


以下のようないびきは、睡眠時無呼吸症候群、またはアレルギー性鼻炎などの鼻の病気のため発生している可能性があります。

 ・毎晩のように出る

 ・一晩中出る

 ・家族やパートナーの安眠を妨げるほど音が大きい

 ・就寝中に一瞬、呼吸が止まる

 ・人よりあごが小さい

 ・扁桃腺やアデノイドが大きい

病気が原因のいびきは、自分で改善・対処するのは難しいので、病院を受診して適切な治療を受ける必要があります。

3.いびきの原因となる病気

いびきが出る病気と、適した診療科を紹介します。

3-1.睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。

原因の多くは肥満ですが、もともとあごが小さい人はやせていても発症するリスクがあります。

また、特に子どもに多いのですが、扁桃腺やアデノイドが大きいため、気道がふさがって呼吸が妨げられることで、病気が引き起こされることがあります。

睡眠時無呼吸症候群の主な症状は、大きないびきや日中の眠気です、さらに、呼吸が妨げられ体内の酸素が不足することにより、心筋梗塞や高血圧などの合併症が生じる危険もあります。

◆「実は怖い!睡眠時無呼吸症候群の合併症とは?」>>

睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合、受診に適した診療科は下記のとおりです。

 ・呼吸器内科

 ・耳鼻咽喉科

 ・循環器内科

 ・いびき外来、睡眠外来

呼吸器内科は、呼吸に関する病気や臓器を専門に診る診療科です。睡眠時無呼吸症候群は、呼吸に支障が生じる病気なので、呼吸器内科で検査や治療を受けることができます。

喫煙によりいびきが生じている疑いのある人は、呼吸器内科で禁煙治療を行うのもいいでしょう。

◆「呼吸器内科とはどんなところ?何をするのかを解説します」>>

慢性的に鼻が詰まっている人は、耳鼻咽喉科を受診するのがいいでしょう。もし睡眠時無呼吸症候群ではなく、鼻の病気がいびきの原因となっている場合も、耳鼻咽喉科で治療を受けることができます。

まれではありますが、心臓に原因があり、睡眠時無呼吸症候群を発症することがあります。この場合、睡眠時無呼吸症候群でもいびきは出ないことが多いのですが、心臓の病気を持ちいびきの悩みがある人は、まずは循環器内科の主治医に相談してください。

迷ったときは、いびき外来や睡眠外来を受診するのもひとつの方法です。これらの専門外来は、数は少ないのですが、いびきや睡眠に関する悩みを総合的に診てくれます。

3-2.鼻の病気

いびきの原因が鼻にある場合、耳鼻咽喉科を受診し、鼻の症状を改善する必要があります。治療により鼻づまりなどの症状がよくなると、いびきが減る可能性があります。

いびきをかきやすい鼻の病気には、以下のようなものがあります。

 ・アレルギー性鼻炎

 ・副鼻腔炎

 ・鼻中隔湾曲症

アレルギー性鼻炎は、ダニや花粉、ペットの毛などアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)に反応して鼻に炎症が引き起こされる病気です。

副鼻腔炎は、風邪などの原因となるウイルスや細菌が、鼻の内部にある副鼻腔にまで及んで炎症を起こす病気です。

アレルギー性鼻炎も副鼻腔炎も、鼻水や鼻づまりがあるため、鼻での呼吸がしにくくなります。そのため、寝ている間に口を開けて呼吸をするようになり、いびきが出やすくなります。

◆「口呼吸といびき」の関係>>

これらの病気の場合、治療により鼻づまりなどの症状が改善し、鼻呼吸ができるようになれば、いびきが改善する可能性があります。

鼻中隔湾曲症の人は、左右の鼻腔を仕切っている鼻中隔が曲がっているため鼻腔が狭くなり、いびきが出やすくなります。

鼻中隔湾曲症が原因のいびきは、手術によって鼻の曲がりが軽減されれば改善されます。

【参考情報】『鼻中隔弯曲症〈びちゅうかくわんきょくしょう〉』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease_kids/index.php?content_id=19

4.睡眠時無呼吸症候群の治療と検査


睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の呼吸状態やいびきの有無などが確認できる検査を行って診断します。

以下、睡眠時無呼吸症候群の検査と治療について説明します。

4-1.検査

検査には、簡易検査と精密検査の2つの種類があります。

簡易検査は、自宅でアプノモニターと呼ばれる装置を装着し行います。入院の必要がないため、忙しい人でも実施しやすい検査です。

◆「簡易検査」について詳しく>>

精密検査は、簡易検査の結果を基にして、より詳細なデータが必要だと判断した場合に行います。

精密検査は、医療機関や検査施設に一泊して行うことが多いのですが、当院では入院せずに自宅で検査を受けることも可能です

◆「精密検査」について詳しく>>

4-2.治療

睡眠時無呼吸症候群と診断されたら、主にCPAP(シーパップ)という医療機器を用いて治療を行います。

CPAPは、寝ている間に呼吸が止まらないように空気を送り込む医療機器です。使用するといびきが改善し、睡眠の質量が上がります。

◆「CPAP」について詳しく>>

患者さんの状態によっては、CPAPではなく、ASVやマウスピースを用いた治療を行うこともあります。

◆「ASV」について>>

◆「マウスピース」について>>

5.おわりに

毎晩のようにいびきをかいている人は、睡眠時無呼吸症候群という病気が原因かもしれません。

睡眠時無呼吸症候群が原因のいびきは、治療によって改善できます。

治療を開始すると、いびきの改善に加え、心血管疾患や生活習慣病などの合併症も予防できます。

いびきに悩んでいる人は、症状や持病により適した病院を選び、相談してみましょう。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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