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いびきが「ひどい」「うるさい」時の原因と対処法

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年06月18日

家族やパートナーから「いびきが激しい」「ひどくなった」と言われても、眠っている間のことなので、ピンとこない人も多いでしょう。

いびきの音は、いびきをかいている本人は気づかなくても、同じ部屋で寝ている人は、耐えられないほどうるさく感じていることも少なくありません。

さらに、いびきが病気の症状として表れているのなら、気づかないうちに病気が進行している可能性もあります。

この記事では、いびきがひどくなる原因と対処法を説明します。

1.いびきとは

いびきは、空気の通り道である気道が狭くなると出やすくなります。狭くなった気道を空気が通る際に、空気に勢いがつくので気道の粘膜が震え、音が鳴ります。

気道が狭くなる原因は後述しますが、原因が一時的なものであるなら、その原因が解消されればいびきも治まります。

しかし、「いびきがだんだんひどくなってきた」という場合は、何らかの病気が原因で音が激しくなったり、一晩中いびきが出ているのかもしれません。

たまに大きないびきが出るるくらいなら心配ありませんが、毎晩のように激しいいびきが生じているなら注意が必要です。

【参考情報】『Snoring』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/15580-snoring

2.いびきがひどくなる原因

いびきは、健康な人でも出ることがありますが、生活習慣の乱れや病気が原因でひどくなることもあります。

以下、いびきがひどくなる原因を説明します。

2-1.疲労やストレス

疲労やストレスが解消されずに体に蓄積されると、回復を促すために筋肉がゆるみます。

その際、のどの筋肉もゆるんで気道が狭くなるので、いびきがひどくなることがあります。

2-2.飲酒

アルコールには筋弛緩作用があるので、寝る前にお酒を飲んだり、晩酌の量が増えると、気道の筋肉がゆるんでいびきが出ることがあります。

2-3.喫煙

タバコに含まれる化学物質は、気道の粘膜を刺激して炎症を起こします。

喫煙の習慣のある人の気道は、慢性的な炎症により狭くなっているため、いびきが出やすくなります。

2-4.肥満

体重が増えると、のど周辺の脂肪も増えます。その結果、のどに付いた脂肪で気道が圧迫されて狭くなり、いびきがひどくなることがあります。

さらに、舌にも脂肪がつくと、その重みでのどの奥に落ち込んで気道をふさぐので、ますますいびきが出やすくなります。

◆「いびきと肥満」についてくわしく>>

2-5.加齢

加齢とともに筋力が低下すると、口周辺の筋肉も徐々に衰えてきます。

口の周りの筋肉が衰えると、睡眠中に口が開いてしまい、口で呼吸をするようになります。すると、舌が落ち込んで気道を塞ぎ、気道が狭くなるので、いびきがひどくなることがあります。

◆「口呼吸がいびきにつながる理由」>>

2-6.アレルギー

花粉症やアレルギー性鼻炎などの病気で鼻が詰まると、鼻で呼吸がしにくくなるので、口呼吸になります。

すると、睡眠中にも無意識のうちに口をあけてしまい、舌が気道に落ち込んでいびきがひどくなります。

◆「いびきとアレルギー」の関係>>

2-7.妊娠・出産・閉経

女性は、出産前後や更年期など、ホルモンバランスが大きく変化する時期に、いびきがひどくなることがあります。

加えて、妊娠による体重増加や出産後の育児疲れなども、いびきがひどくなる原因となります。

また、女性ホルモンの一種であるエストロゲンには、気道の筋肉を広げるはたらきがあるのですが、閉経に伴いエストロゲンの分泌が減ってしまいます。

そのため、更年期以降は気道が狭くなり、いびきがひどくなることがあります。

◆「女性のいびき」についてくわしく>>

3.いびきを予防する方法

いびきが気になる方は、以下の予防法を試してみてください。いびきの原因を取り除けば、治まってくる可能性があります。

3-1.肥満体型の人は減量する

肥満度は「BMI=体重(kg)÷身長(m)の2乗」で求められます。BMI=22が適正体重であり、25以上だと肥満になります。

肥満体型の人は、自分の肥満度を把握しながら、BMI=22を目指して減量しましょう。

ただし、急激な減量は筋肉量の減少やリバウンドを招くため、無理のない範囲で徐々に体重を減らしていきましょう。

【参考情報】『肥満と健康』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html

3-2.寝酒を控える

お酒を飲むときは、寝る4時間前までに飲酒を終えるとアルコールの影響を受けにくくなるので、睡眠中に気道の筋肉が狭くなるのを防ぐことができます。

「よく眠れるから」という理由で、寝酒が習慣となっている人もいるでしょう。しかし、体内にアルコールが残ったまま眠ってしまうと、眠りが浅くなるなど睡眠の質も低下します。

できるだけ、体の中にアルコールが残っていない状態で眠りにつきましょう。

【参考情報】『アルコールの作用』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-003.html

3-3.禁煙する

喫煙の習慣がある人は、禁煙するとタバコの有害物質による影響を受けなくなるので、いびきが改善される可能性があります。

しかし、タバコは非常に依存性が高く、禁煙を試みても多くの人が失敗してしまいます。

自分の力だけで何とかしようとせず、周囲のサポートを受けることで、禁煙が成功する可能性が高まります。また、禁煙外来での治療も選択肢の一つです。

【参考情報】『禁煙治療ってどんなもの?』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-06-007.html

◆当院の禁煙外来について>> 

3-4.口周囲の筋肉を鍛える

口周りの筋肉を鍛えると、無意識のうちに口が開いてしまうことが減るので、睡眠中の口呼吸を防ぎ、いびきを防ぐことができます。舌の筋肉も鍛えると、より効果が高まります。

【参考情報】『オーラルフレイル対策のための口腔体操』日本歯科医師会
https://www.jda.or.jp/oral_frail/gymnastics/

3-5.寝室の環境を見直す

寝室は、ダニやホコリなどのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が溜まりやすい場所です。

アレルギー性鼻炎や花粉症のため、鼻が詰まっていびきが出る人は、こまめな掃除や換気によってアレルゲンを減らしましょう。空気清浄機を活用するのもいいでしょう。

また、寝室の湿度を40%~60%程度に保つと鼻や喉が潤うため、いびきの予防につながります。

◆「いびきをかくと喉が痛くなる理由」>>

3-6.鼻詰まりを治す

花粉症やアレルギー性鼻炎の疑いがあるなら、病院を受診して適切な治療を受けると、鼻詰まりが解消され、いびきが軽減する可能性が高まります。

思い当たる人は、耳鼻咽喉科、またはアレルギー専門医のいる病院を受診してみましょう。

◆「花粉症の治療~対症療法と根治治療」>>

4.対策しても効果が感じられない場合

上記で説明した対策を行っても、効果が感じられない場合は、睡眠時無呼吸症候群という病気が原因でいびきが出ているのかもしれません。

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。

睡眠時無呼吸症候群の主な症状は、いびきと日中の眠気です。いびきの音は激しく、しかも毎晩のように出るため、一緒に寝ている人の安眠を妨げてしまいます。

また、呼吸が止まるたびに、自分では気づかなくても一瞬目が覚めているため熟睡できず、日中に猛烈な眠気に襲われることがあります。車や電車の運転中に寝てしまい、事故につながったケースもたびたび報道されています。

◆「睡眠時無呼吸症候群と運転業務の関係」>>

また、睡眠時無呼吸症候群は、さまざまな合併症を引き起こす病気です。

毎晩のように呼吸が止まることで、体内の酸素が不足するため血管に負担がかかり続け、その結果、心血管疾患や生活習慣病になる恐れがあります。最悪の場合、心筋梗塞や脳梗塞を発症して突然死することもあります。

◆「実は怖い!睡眠時無呼吸症候群の合併症とは?」>>

家族やパートナーからいびきを指摘されれば、病気を疑うことも可能ですが、一人で寝ている人は、自分のいびきがひどくなっていることに気づかないかもしれません。

そのような場合は、いびきを録音できるアプリなどで確認し、おかしいと感じたら病院を受診しましょう。

睡眠時無呼吸症候群が診断されたら、主にCPAP(シーパップ)という医療機器を用いて治療を行います。CPAPで睡眠中に鼻から空気を送り込み、呼吸が止まらないようにサポートします。

◆「CPAP」についてくわしく>>

CPAPを用いた治療によりいびきは改善し、さまざまな合併症も予防できます。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっとくわしく>>

5.おわりに

たまに大きないびきが出るくらいなら心配ありませんが、「いびきがだんだんひどくなっている」「毎晩のようにいびきをかいている」場合は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。

いびきを指摘されたら不快な気持ちになるかもしれませんが、治療のチャンスだと受け止めて、医師に相談してください。

睡眠時無呼吸症候群は、呼吸器内科で検査と治療ができます。適切な治療によりいびきも改善しますし、命にかかわる合併症も予防することができます。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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