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いびきは睡眠の質を下げる?原因と影響を解説します

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年11月25日

・ちゃんと寝ているはずなのに、寝た感じがしない

・寝ても寝ても疲れが取れない

このような悩みがあるなら、その原因はいびきかもしれません。

睡眠は心身の健康を保つために非常に重要です。しかし、いびきをかいてしまうと、睡眠の質が低下して、疲労やストレスが十分に回復できない恐れがあります。

この記事では、いびきの原因や、いびきが睡眠の質に与える影響について解説します。いびきを改善する方法も紹介しますので、ぜひ目を通してください。

1.いびきとは


いびきは、空気の通り道である気道が、睡眠中に狭くなると生じます。

狭くなった気道を通るとき、空気に勢いがつくので、その勢いで気道の粘膜が振動して音が鳴ります。

いびきを普段かかない人でも、その日の体調によって一時的に生じることがあります。このような場合は、原因がなくなれば改善する可能性が高いです。

しかし、慢性的にいびきをかいている場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。

【参考情報】『Snoring』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/snoring/symptoms-causes/syc-20377694

2.いびきの原因


いびきは、生活習慣の乱れや体調の変化など、さまざまな原因で生じます。

以下、いびきの主な原因について説明します。

2-1.肥満

肥満体型の人は、首周りに脂肪がつくことで気道が圧迫され狭くなります。さらに、舌にも脂肪がつくと、その重みで舌が喉の奥に落ち込み、気道を塞ぐことがあります。

このように、首周りや舌に脂肪が付くことで気道が狭くなり、いびきが出ることがあります。

◆「いびきの原因は肥満?改善法と危険なサインを知っておこう」>>

2-2. 鼻づまり

風邪や鼻炎などで鼻が詰まっていると、鼻での呼吸がしにくくなるため、無意識のうちに口を開けて呼吸するようになります。

睡眠中に口呼吸になると、舌が喉の奥に落ち込んで気道を塞ぐため、気道が狭くなって、いびきが出やすくなります。

◆「口呼吸がいびきにつながる理由と予防のためにできること」>>

2-3.飲酒

アルコールには、筋肉を緩める作用があるので、お酒を飲むと気道の筋肉がゆるくなります。

気道の筋肉がゆるくなると、気道が狭くなるので、いびきが出やすくなります。特に寝酒の習慣がある人は、いびきをよくかきます。

2-4.疲労やストレス


疲労やストレスを感じると、体は回復を促すため筋肉をゆるませます。すると、気道の筋肉もゆるむため気道が狭くなり、いびきをかきやすくなります。

2-5.扁桃腺・アデノイドの肥大

喉の奥にある扁桃腺やアデノイドが大きい人は、それらが気道を塞ぐので気道が狭くなり、いびきが出やすくなります。

子どもがよくいびきをかく場合は、アデノイド肥大が原因であることが多いです。

2-6.睡眠薬

睡眠薬の中には、筋弛緩作用のある成分が含まれているものがあります。その作用によって気道の筋肉がゆるんでしまい、いびきにつながることがあります。

睡眠薬を処方されている人がいびきに悩んでいるなら、筋弛緩作用のない睡眠薬が使えないかどうか、医師に相談してみましょう。

2-7.加齢

加齢に伴い口周りの筋力が低下すると、口が開きやすくなります。そこで睡眠中に口が開くと、口呼吸になって舌が喉に落ち込み、いびきにつながることがあります。

さらに女性の場合、気道を広げるはたらきを持つ女性ホルモンの分泌量が閉経により減少し、いびきが増えることがあります。

◆「更年期といびき」の関係>>

3.いびきが睡眠の質に与える影響


いびきは睡眠の質を下げると言われています。

以下、睡眠の質に与える影響を説明します。

3-1.中途覚醒

中途覚醒とは、眠りについたあとに、途中で何度も目が覚めてしまうことです。

睡眠中に何度も目が覚めると、睡眠の質が大きく低下し、体の疲れが取れにくくなります。さらに、眠れないことそのものがストレスになり、精神的にも影響を受けます。

中途覚醒の原因は、加齢や飲酒、精神疾患などさまざまですが、いびきも原因のひとつです。

「いびきをかくのはよく眠っている証拠」と思う人もいるかもしれません。しかし、実際にはいびきをかくことで眠りが浅くなり、夜中に目が覚めやすくなります。

いびきによって眠りが浅くなると、その浅い眠りゆえに、少しの刺激でも目が覚めやすくなるため、自分のいびきの音で起きてしまうこともあります。

【参考情報】『不眠症』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html

3-2.体内の酸素不足

いびきをかくということは、寝ている間に気道が狭くなっている証拠です。その結果、呼吸がスムーズにできず、体内に十分な酸素が取り込めない状態になります。

たまにいびきをかく程度なら、そのような心配はありませんが、毎日のようにいびきをかいているなら、酸素不足により心臓や血管に負担がかかっている可能性があります。

このように心臓や血管に負担がかかることが続くと、高血圧や心筋梗塞など、心血管疾患のリスクが高まっていきます。

◆「いびきが心臓に負担をかける理由」>>

3-3.寝不足

いびきは眠りを浅くするため、十分な睡眠時間を確保しても深い眠りは得られません。そのため、昼間に眠くなったり、ストレスが溜まってイライラすることが多くなります。

また、睡眠不足が続くと、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まるとも言われています。

【参考情報】『睡眠と生活習慣病との深い関係』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-008.html

4.いびきを改善する方法


この章では、いびきを改善するのに役立つ方法を紹介します。

まずは、できそうなことから試してみてください。

4-1.肥満体型の解消

肥満体型の人は、首回りと舌についた脂肪を落とすと、気道が広がっていびきが改善する可能性があります。

しかし、部分的に脂肪を落とすのは難しいので、標準体重を目指して減量しましょう。

肥満度(BMI)は、体重(kg)÷身長(m)の2乗で求められます。適正体重はBMI=22であり、25以上だと肥満になります。

【参考情報】『身長から、自分の適正体重を知る。』日本医師会
https://www.med.or.jp/forest/health/eat/11.html

4-2.口呼吸の防止

起きているときは意識して口を閉じている人でも、寝ている間は無意識に口呼吸になってしまうことがあります。

口呼吸を防ぐためには、寝る前に専用のテープやマスクを使って口を閉じてみましょう。

ただし、鼻づまりがある人は呼吸が苦しくなるため、グッズで口を閉じることはしないでください。

また、口周りの筋肉を鍛えると口が開きにくくなるので、いびきの改善につながります。

4-3.鼻づまりの治療

アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎が原因で鼻づまりがある人は、耳鼻咽喉科を受診して適切な治療を受けましょう。

治療により鼻の通りが良くなれば、鼻での呼吸がスムーズになるので、口呼吸が改善していびきが出にくくなります。

【参考情報】『近くの耳鼻咽喉科専門医を探しましょう!』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/search_citizens/

4-4.寝室の環境を見直す

アレルギーによって鼻づまりが生じている人は、寝室の環境を見直しましょう。

寝室は、ダニや花粉などのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が溜まりやすい場所です。こまめに掃除をし、寝具を洗濯して、アレルゲンが溜まらないようにしましょう。

さらに、空気清浄機を設置し、寝室の空気をきれいに保つことも効果的です。

◆「空気清浄機の効果」について>>

4-5.生活習慣の見直し

過度の飲酒や慢性的な喫煙は、気道の閉塞を招くのでいびきの原因となります。

どうしてもお酒を飲みたい人は、寝る4時間前までに飲み終えると、アルコールが抜けるのでいびきが出にくくなります。

タバコに含まれる成分は気道の粘膜に炎症を引き起こすので、喫煙の習慣がある人は、気道が腫れて狭くなります。

喫煙者は禁煙に成功すると、いびきが改善する可能性があります。

5.対策しても効果が感じられない場合


いびきを改善する方法を試しても効果が感じられない場合は、睡眠時無呼吸症候群という病気のせいで、いびきが出ているのかもしれません。

睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が止まったり、浅い呼吸になったりすることを繰り返す病気です。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてくわしく>>

睡眠時無呼吸症候群の人のいびきは、毎晩のように出て、しかも音が激しいため、周りの人から「うるさい」「眠れない」と指摘されることも多いです。

また、熟睡できずに睡眠の質が低下するため、運転中など寝てはいけない場面でも猛烈な睡魔に襲われ、事故やミスを起こしてしまう恐れがあります。

◆「睡眠時無呼吸症候群と運転業務の関係性」についてくわしく>>

なにより、睡眠時無呼吸症候群になると怖いのは合併症です。治療を受けずに放置してしまうと、酸素不足や睡眠不足により、高血圧や糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まったり、心筋梗塞や脳卒中などの突然死を引き起こしたりする病気を合併することがあります。うつ病などの精神疾患を悪化させることもあります。

◆「合併症」についてくわしく>>

睡眠時無呼吸症候群の治療は、主にCPAP(シーパップ)を用いて行います。CPAPは、睡眠中に空気を送り込んで、呼吸をサポートする医療機器です。

◆「CPAP」についてくわしく>>

CPAP以外の治療法としては、ASVと呼ばれるマスク式の人工呼吸器を使う治療や、マウスピースを装着する治療、手術療法があります。

◆「ASV治療」についてくわしく>>

◆「マウスピース治療」についてくわしく>>

◆「手術療法」についてくわしく>>

6.おわりに

いびきを改善する対策をしても良くならない場合、睡眠時無呼吸症候群が原因かもしれません。

思い当たる人は、睡眠時無呼吸症候群の検査ができる病院を探して、相談してみましょう。医療現場では、ご家族からいびきを指摘されて受診する患者さんも多い状況です。

もし、睡眠時無呼吸症候群が原因でいびきが出ている場合は、治療によっていびきは改善します。

さらに、高血圧などの心血管疾患や糖尿病のリスクも下がり、健康的な生活を取り戻すことができます。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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