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睡眠時無呼吸症候群と他の呼吸器疾患が合併すると危険な理由

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年10月28日

喘息やCOPDのような呼吸器疾患の患者さんが、睡眠時無呼吸症候群になると、どうなるのでしょうか。

日中、咳や息苦しさに悩まされているのに、夜寝ている間まで呼吸が止まってしまうと思うと、怖いと感じるかもしれません。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群と呼吸器疾患の関連性や、合併した時の危険性を説明していきます。

呼吸器疾患を持つ人や、睡眠中にむせたり息苦しさを感じることがある人は、ぜひ読んでください。

1.呼吸器疾患とは


呼吸器疾患とは、上気道・気管・気管支・肺などの呼吸器に関する病気を指します。

代表的な病気は、以下の通りです。

 ・喘息
 ・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
 ・肺炎
 ・肺がん
 ・肺結核

上記のほかにもたくさんの病気があり、身近なものでいうと、風邪やインフルエンザも呼吸器疾患のひとつです。

呼吸器が病気によって障害されてしまうと、肺での酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなったり、空気の取り込み自体に支障が出てきます。

それにより、咳、痰、息苦しさ、胸の痛みなどの症状が現れます。

【参考情報】『呼吸器の病気』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/

◆「呼吸器内科」について詳しく>>

2.睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に気道が狭くなったり、呼吸中枢がうまく働かなかったりすることで、無呼吸や低呼吸を繰り返す病気です。

寝ている間の無呼吸を自覚することは難しいかもしれませんが、大きないびきや夜中に何度も目覚めてしまう、耐えられないほどの昼間の眠気が続くようなら、病気の疑いがあります。

日中の眠気は、仕事や作業に対する集中力も落ちてしまうため、事故に繋がることもあります。

◆「いびきと病気」について>>

この病気になりやすい人の特徴は、肥満で顎や首の周りに脂肪がついている、顎が小さい、首が短い、舌が大きい、扁桃肥大がある、歯並びが悪い、飲酒・睡眠薬の服用などが挙げられます。

病院では、疑わしいと判断した場合に検査を行います。検査には、簡易検査精密検査があります。どちらも寝ている間に終わる検査で、痛みはありません。

睡眠時無呼吸症候群も、呼吸器疾患のひとつです。治療には、寝ている間の呼吸を助ける医療装置・CPAP(シーパップ)を使うことが多いです。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっと詳しく>>

3.睡眠時無呼吸症候群と呼吸器疾患との関連


睡眠時無呼吸症候群と他の呼吸器疾患の関連は強く、それぞれの病気に影響を与え合うことがわかっています。

3-1.喘息との関連

アメリカで実施された「ウィスコンシン睡眠コホート研究」によると、喘息のある人はない人に比べ、睡眠時無呼吸症候群を発症する可能性が約40%高いという結果が出ています。

【参考情報】『Association between asthma and risk of developing obstructive sleep apnea』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25585327/

睡眠時無呼吸症候群は、喘息の症状を悪化させてしまう原因の一つです。

喘息では気管支が痙攣して細くなっていて、発作的な呼吸困難を起こします。
そして、睡眠時無呼吸症候群では、舌の付け根などにより喉が塞がれている状態なのに、体は肺を膨らませて呼吸しようとします。

このような状態が繰り返されると、気道に強い圧がかかり、呼吸困難を引き起こしてしまいます。

そして、喘息が重症であるほど、また喘息にかかっている期間が長いほど、睡眠時無呼吸症候群になりやすいとも言われています。

一方で、喘息の患者さんのうち、睡眠時無呼吸症候群の「診断を受けていない」「治療が十分でない」人は、喘息が悪化する傾向にあります。

睡眠時無呼吸症候群により、夜間に無呼吸や低呼吸を繰り返していると、喘息の症状がうまくコントロールできず、発作を引き起こしてしまう可能性があります。
あまり関係のない別の病気と思わず、積極的に治療を受けましょう。

【参考情報】『Asthma and Obstructive Sleep Apnea Overlap: What Has the Evidence Taught Us?』ATS Journals
https://www.atsjournals.org/doi/10.1164/rccm.201810-1838TR

◆「喘息」について詳しく>>

3-2.COPDとの関連

COPDの主な原因は、喫煙です。ほかにも職場などで有害物質を吸い込みやすい環境にいる人も発症することがあります。症状としては、階段の上り下りなどの動作による息切れや、咳や痰などがあります。

COPDと睡眠時無呼吸症候群を合併すると、COPDのみ、または睡眠時無呼吸症候群のみを発症している人と比べて、死亡率が大幅に高くなります。

COPDの患者さんは、病気のため肺機能が低下しているので、もともと体内の酸素が不足しています。そこに、睡眠時無呼吸症候群が加わると、さらに酸素が不足します。

どちらも酸素不足を引き起こす病気なので、合併すると、さらに酸素不足に拍車がかかります。

すると、不足分の酸素を補おうとして、心臓や肺に大きな負担がかかり、肺高血圧症や心房細動のような病気のリスクが高くなります。

【参考情報】『The Overlap Syndrome』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6298617/#:~:text=The%20overlap%20syndrome%20(OS)%20was,with%20OSA%20or%20COPD%20alone.

特に、肥満のあるCOPD患者さんは、睡眠時無呼吸症候群を合併しやすいのですが、CPAPによる治療によって、合併を予防することができます。

◆「COPD」について詳しく>>

◆「肥満と睡眠時無呼吸症候群の関係」について詳しく>>

その他の呼吸器疾患との関連


その他、睡眠時無呼吸症候群の患者は肺炎の発症率が高いことや、肺がん患者に睡眠時無呼吸症候群が多いことも示されています。

【参考情報】
・『Sleep apnea and risk of pneumonia: a nationwide population-based study』The Canadian Medical Association Journal
https://www.cmaj.ca/content/186/6/415

・『Sleep Disordered Breathing Is Highly Prevalent in Patients with Lung Cancer: Results of the Sleep Apnea in Lung Cancer Study』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30261487/

◆「肺がん」について詳しく>>

4.合併すると危険な理由


喘息やCOPDの患者さんは、病気の影響で、日中も酸素不足の状態です。そこに睡眠時無呼吸症候群が加わると、夜間も酸素が不足します。

酸素不足の状態が続くと、症状である息切れがひどくなり、呼吸が苦しくなってしまう可能性が高くなります。

特に、COPDの患者さんは高齢であることが多いため、加齢による影響で眠りが浅くなり、夜中や早朝に目が覚めてしまうこともあるでしょう。

そこに、睡眠中の無呼吸が加わると、さらに睡眠の質が下がり、心理的なストレスも大きくなります。
そのストレスのために,高血圧,脳卒中,心筋梗塞などの虚血性肺疾患の発生を増加させることもあり、糖尿病,高脂血症もしばしば合併します。

【参考情報】『高齢者の睡眠』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-004.html

◆「睡眠時無呼吸症候群とストレスの関係性」について詳しく>>

◆「睡眠中の酸素不足による悪影響」について>>

5.おわりに

喘息やCOPDと睡眠時無呼吸症候群が合併すると、二つの病気が互いに影響を受け、症状が悪化しやすくなります。

さらに喘息とCOPDも合併しやすいので、最悪の場合、3つの病気が合併することもあり得ます。

【参考情報】『安静時の息苦しさは? ぜんそくとCOPDの合併』日本医師会
https://www.med.or.jp/dl-med/people/plaza/236.pdf

呼吸器疾患を持つ方は、「大きないびき」「昼間の眠気」「夜中に何度も目が覚める」ということが続いたら、睡眠時無呼吸症候群を疑ってみてください。

早くに治療を開始すれば、重症化を防ぎ、命を守ることができます。

◆「睡眠時無呼吸症候群は何科を受診すれば?」についてもっと詳しく>>
◆「睡眠時無呼吸症候群治療のゴールと治療法」>>

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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