喘息の人が「やってはいけない」ことと注意点をまとめました
喘息の症状を悪化させないために、また発作を予防するために、避けるべき行動があります。
既に注意を払っている人も多いでしょうが、治療により症状が安定してくると、つい油断してしまうこともあるかもしれません。
この記事では、喘息の患者さんが知っておきたい日常生活での注意点を紹介します。正しい知識と対処法を知り、より健康的な毎日を送りましょう。
目次
1.喘息とはどのような病気か
喘息は、空気の通り道である気道が慢性的な炎症を起こして過敏になることで、以下のような症状が現れる疾患です。
・激しい咳
・息苦しさ
・「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という特徴的な呼吸音(喘鳴:ぜんめい)
喘息の原因は、アレルギー性と非アレルギー性に分類されます。
【アレルギー性の主な原因】
・ダニ
・ハウスダスト
・カビ
・ペットの毛
【非アレルギー性の主な原因】
・風邪などの呼吸器感染症
・タバコ
・過労やストレス
症状の悪化を防ぐには、毎日の服薬を続けるとともに、原因となる物質や環境を避けることが大切です。
2.吸ってはいけない!悪化を招く原因
喘息の患者さんの気道は敏感になっているので、健康な人なら反応しないわずかな刺激によっても発作が引き起こされることがあります。
この章では、喘息の人が吸い込むと、咳や息苦しさを引き起こすものを紹介します。
2-1.ダニなどのアレルゲン
特に、アレルギーが原因で喘息になった人は、アレルギーを引き起こす原因となる物質(アレルゲン)を吸い込まないように注意しましょう。
代表的なアレルゲンは「ダニ」です。ダニは、布団やソファなど布製品の中に多く生息します。また、生きているダニだけではなく、死骸やフンもアレルゲンとなります。
ダニを完全に排除するのは難しいのですが、こまめな掃除や洗濯で数を減らしたり、ダニが溜まりにくい素材の家具や雑貨を選んで対策を講じましょう。
2-2.煙
健康な人でも、煙を吸ったときに咳が出ることはありますが、通常はすぐに治まります。
しかし、喘息の人は、以下のような煙を吸い込むと咳が止まらなくなったり、呼吸が苦しくなってしまう危険があるので注意が必要です。
・タバコ
・花火
・バーベキュー
・線香
煙のある場所では十分に距離をとり、煙を吸わないように心がけましょう。
2-3.強いにおい
ツンと鼻につく刺激臭や、洗剤や柔軟剤、芳香剤などの家庭用品に含まれる香料が刺激となり、発作が引き起こされることがあります。
洗剤などを購入する際は、無香料のものや、香りが控えめなものを選ぶようにしましょう。
2-4.冷たい空気・熱い空気
エアコンの冷風や、お風呂の湯気などの熱い空気を吸い込むと、気道が刺激され咳が出やすくなります。
エアコンを使用する際は、風が直接当たらないよう風向きを調整したり、風よけカバーなどのグッズを活用してもいいでしょう。
お風呂の湯気を避けるのは難しいのですが、毎日の服薬により、気道が刺激に反応しにくい状態に持っていくことで、症状が出にくくなります。
2-5.その他
その他、花粉、黄砂、汚れた空気などを吸い込むことでも症状が悪化する恐れがあります。
喘息の患者さんは、花粉症になると症状が悪化しやすいので、花粉に対するアレルギーがあるなら、早めに抗ヒスタミン薬などを処方してもらいましょう。
3.食事における注意点
食事によっても症状が悪化する可能性があります。以下のポイントに気をつけて、健康的な食生活を心がけましょう。
3-1.アクの強い野菜は控えめに
アクの強い野菜には、気道を狭くする物質であるヒスタミンやコリンが含まれているため、食べ過ぎると発作が誘発されることがあります。
・タケノコ
・ナス
・ホウレンソウ
上記のような野菜は、一度にたくさんの量を食べないように注意しましょう。
3-2.食物アレルギーに注意
喘息の人は、他のアレルギー性疾患も発症しやすいため、食物アレルギーになる恐れがあります。
【食物アレルギーの原因となる主な食材】
・卵
・牛乳
・小麦
・イクラ、たらこなどの魚卵
・そば
食べ物を口にして以下のような症状が出た場合は、すぐに食べるのをやめて病院を受診してください。
・咳やくしゃみ
・呼吸困難
・目や皮膚のかゆみ
・吐き気
食物アレルギーは、同じ食材ばかり食べていると発症しやすくなります。例えば、タンパク質を摂取したいなら、卵のほか肉や魚、大豆製品などいろいろな食材から摂取し、特定の食材に偏ることは避けましょう。
【参考情報】『Food allergy』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/food-allergy/symptoms-causes/syc-20355095
◆「喘息、アレルギー、疲労、メンタルと食事の関係について」>>
3-3.食べ過ぎに注意
肥満は喘息の発症や悪化を招きます。特に、お腹周りの脂肪が増える内臓脂肪型肥満だと、お腹の膨らみが横隔膜を押し上げることで肺が圧迫され、症状が悪化しやすくなります。
肥満度(BMI)は、体重(kg)を身長(m)の二乗で割った数値で判断します。数値が25以上の人は、食べ過ぎに注意して、適正体重を維持するように努めましょう。
【参考情報】『Asthma and Obesity』CDC
https://www.cdc.gov/asthma/asthma_stats/asthma_obesity.htm
4.飲み物の注意点
飲み物でも、喘息の症状が悪化する可能性があります。
4-1.刺激の強い飲料は控えめに
冷たい飲み物や炭酸飲料、スパイスの効いた飲み物を飲むと、のどが刺激され咳が出やすくなります。
刺激の強い飲料は、摂り過ぎないようにしましょう。
4-2.カフェインに注意
喘息治療のため「テオフィリン」系の薬を使っている人は、カフェインを含む飲み物を飲むと、頭痛や動悸などの副作用が強く出る恐れがあります。
【テオフィリン系の薬】
テオフィリン系の薬を飲んでいる人は、コーヒーやエナジードリンクなどカフェインを含む飲み物は控えめにしましょう。
4-3.アルコール誘発喘息に注意
お酒を飲むと、体内に入ったアルコールが肝臓でアセトアルデヒドという物質に分解されます。
このアセトアルデヒドには、気道を狭くするヒスタミンを増やす働きがあるため、お酒を飲むと喘息の発作が現れることがあります。
日本人は欧米人に比べ、アセトアルデヒドを分解する酵素の働きが弱い人が多いと報告されています。喘息の人は、お酒を飲み過ぎないように注意しましょう。
【参考情報】『アルコールの吸収と分解』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-002.html
5.運動の注意点
息がきれるような激しい運動や、持久力を必要とするスポーツで「運動誘発喘息」と呼ばれる喘息の発作が起こることがあります。
運動誘発喘息を防ぐには、運動前に発作治療薬(リリーバー)を吸入しておいたり、発作が出にくい種目を選ぶなどの対策が考えられます。
運動の継続により体力がつくと、発作が起きにくい体になるので、運動そのものを避ける必要はありません。医師と相談しながら、自分に合ったスポーツを適度に楽しみましょう。
6.薬の注意点
喘息の患者さんは、以下のような薬の使用には注意が必要です。
6-1.アスピリン
アスピリンとは、解熱剤や鎮痛剤に配合されている成分です。この成分を含む薬を飲むと、「アスピリン喘息」と呼ばれる喘息発作が誘発されることがあります。
アスピリン喘息は、それまでアスピリンを服用して問題なかった人でも、いきなり発症することがあります。また、アスピリンに似た成分が含まれた薬を飲んだときも、同様の症状が引き起こされることがあります。
解熱剤や鎮痛剤を服用した後に、激しい咳や強い鼻づまり、顔面紅潮などの症状が現れたら、すぐに病院を受診してください。
6-2.コデイン配合の咳止め薬
喘息の発作時に「コデイン」という成分が配合された咳止め薬を服用すると、呼吸抑制の副作用が生じ、症状が悪化する恐れがあります。
喘息の人が、風邪などで咳止め薬を使用する場合は医師や薬剤師に相談し、コデインを含まない薬を選んでもらいましょう。
7.おわりに
喘息の患者さんは、発作を引き起こす要因・アレルギーを引き起こす要因を知り、それらを避けたり取り除くことで症状の悪化を防ぐことができます。
その上で、医師の指示に従って治療を継続し、発作が出にくい状態を保っていきましょう。
治療により症状がなくなっても、喘息が治ったわけではないので、自己判断で通院や服薬を中断してしまうと、再び発作が起こる恐れがあります。
服薬を続けながら食生活や生活環境を整え、症状をコントロールしていきましょう。