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風邪が喘息に与える影響と2つの病気の関係

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)

風邪と喘息は別の病気ですが、どちらも「咳」が出る病気なので、違いがわかりくいこともあるでしょう。

また、風邪をひいたことがきっかけで、喘息を発症したり、喘息の症状が悪化することもあります。

この記事では、風邪が喘息に与える影響を解説します。風邪と喘息の関係も説明しますので、ぜひ参考にしてください。

1.喘息とはどんな病気か

喘息は、空気の通り道である気道に、慢性的な炎症が生じることで発症します。

炎症により過敏になった気道の粘膜は、ホコリや冷気のようなのわずかな刺激にも敏感に反応し、以下のような症状が現れます。

 ・激しい咳

 ・喘鳴(ぜんめい:ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸音

 ・息苦しさ

 ・胸の痛み

 ・喉の違和感

喘息の原因は、アレルギー性(アトピー型)と非アレルギー性(非アトピー型)の2つに分けられます。子どもはアレルギー性、大人は非アレルギー性の喘息が多いです。

◆「大人の喘息|子供の喘息との違いと特徴」>>

アレルギー性の喘息は、ダニやペットの毛、花粉などのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)に反応して症状が現れます。

非アレルギー性は、過労やストレス、タバコの煙、風邪やコロナ等の呼吸器感染症などが原因として挙げられますが、原因が特定できないこともあります。

喘息の症状は、時間帯や季節によって異なることがあります。たとえば、寝ている間は自律神経の影響で気道が狭くなるため、夜間から早朝にかけて症状が悪化しやすくなります。

また、台風接近に伴い症状が悪化するなど、気候の変化や寒暖差、気圧の乱高下に影響を受けることも多いです。

◆「喘息と天気や気候の関係」>>

喘息と診断されたら、毎日吸入ステロイド薬や気管支拡張薬を服用して治療を継続し、症状をコントロールすることが大切です。

治療により症状が出なくなっても、気道の炎症は続いているので、自己判断で薬を止めてしまうと、また症状が現れて、さらに悪化する恐れがあります。

◆「喘息」についてもっとくわしく>>

2.風邪と喘息の違い

風邪と喘息は、ともに咳が出る病気ではあるもの、根本的には異なる疾患です。

風邪は、ウイルスや細菌に感染して発症する病気ですが、喘息はアレルギーやストレスなどが原因なので、人にうつることはありません。

また、風邪の症状は咳のほかに、発熱や鼻水、鼻づまりなどがありますが、喘息では鼻水や鼻詰まりは通常ありません。ただし、喘息は花粉症やアレルギー性鼻炎を合併しやすいので、その場合は鼻水や鼻詰まりが生じることがあります。

◆「喘息と鼻炎」の関係>>

風邪は通常、安静にしていれば1週間程度で回復します。そのため、風邪で咳が出ても、特に治療はしなくても1週間くらいで自然と治まります。しかし、喘息の咳は、未治療では治まりません。市販の風邪薬や咳止め薬を飲んでも効果はありません。

◆「市販の咳止め薬は効く?効かない?」>>

風邪と喘息の違いが分かりにくい場合は、咳をしている人の背中に耳を当ててみましょう。もし「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」という音が聞こえたら、喘息の可能性があります。ただし、乳幼児は気管や気管支が未熟なので、喘息ではなく気管支炎でもそのような呼吸音が生じることがあります。

◆乳幼児に多い「喘息性気管支炎」とは?>>

3.風邪から喘息になる可能性があるのか

風邪と喘息は別の病気ではありますが、風邪をはじめとした呼吸器感染症がきっかけとなり、喘息を発症することがあります。

風邪を引いたあと、鼻水や鼻づまりなどの他の症状が治まったにもかかわらず、咳だけが残っている場合は注意が必要です。

風邪を引いた後、咳だけが2週間以上続いている場合は、風邪がきっかけとなり喘息をを発症した、あるいは、風邪をひいた後に、風邪とは別の原因で喘息を発症した疑いがあります。

また、喘息とよく似た病気である咳喘息も、風邪をきっかけに発症することがあります。咳喘息は、咳だけが長く続く病気ですが、未治療だと喘息に移行することがあります。

◆「咳喘息」についてくわしく>>

喘息を放っておくと、炎症が悪化して気道が徐々に硬くなり、狭くなっていきます。その結果、治療をしても気道が元の状態に戻らなくなります。この現象は「気道のリモデリング」と呼ばれ、難治化の要因とされます。

【参考情報】『気道リモデリングの病態の理解とその治療への応用』日本呼吸器学会
https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/041090611j.pdf

もし、風邪薬や咳止め薬を服用しても症状が改善されない場合は、一旦服用を中止して病院を受診しましょう。

また、「咳がどんどん激しくなってくる」「いつもより長引いている」と感じた場合も病院を受診して、咳の原因を調べましょう。

4.喘息の人が風邪を引いたらどうなるのか

喘息の患者さんは、風邪を引くと気道の炎症が強まって、症状が悪化することがあります。

【参考情報】『Asthma: Limit asthma attacks caused by colds or flu』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma-attack/in-depth/asthma/art-20043943

喘息の患者さんは、症状の悪化を防ぐため、風邪を予防することが大切です。手洗いやマスク着用などの基本的な対策をこまめに行ったり、食事や運動で体調を管理して、感染症を防ぎましょう。

◆「マスクの付け方と選び方」>>

風邪の症状がつらく、咳止め薬や風邪薬を服用したいと思った時は、自己判断で薬を選ばないようにしましょう。

市販薬の中には、喘息の症状を悪化させる成分や、現在服用している薬の成分と重複する成分が含まれている可能性があります。主治医に相談し、適切な薬を処方してもらうことが大切です。

風邪薬を服用する際は、喘息の薬は中止せず、医師の指示通りに服用を続けてください。喘息は長期間の治療が必要な慢性疾患です。途中で治療を中断すると、薬の効果で落ち着いていた気道の炎症が再び悪化する恐れがあります。

◆「喘息治療のカギとなる“気道の炎症”を抑えるには?」>>

5.おわりに

風邪と喘息は違う病気です。しかし、喘息の初期症状は風邪と似ているため、自分で判断するのは難しいかもしれません。

また、風邪をきっかけに喘息を発症することがあるため、「風邪が長引いている」と感じた場合は注意が必要です。

もし、風邪を引いた後に咳が2週間以上続いていたら、呼吸器内科を受診してください。喘息や咳喘息、あるいは別の呼吸器疾患を発症している可能性があります。

喘息と診断されたら、薬剤で気道の炎症を抑えて症状をコントロールすることで、健康な人と変わらない生活を目指していきます。同時に、風邪をはじめとした呼吸器感染症を予防して、悪化を防いでいきましょう。

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