喘息・アレルギー治療薬「ゾレア」の特徴と効果、副作用
今までさまざまな治療法を試しても、喘息の症状が改善されないという患者さんには、生物学的製剤と呼ばれる注射薬を処方することがあります。
ゾレア(成分名:オマリズマブ)は、2週間または4週間ごとに皮下注射するアレルギー治療薬です。使用にあたっての条件はいくつかありますが、今までの治療法では効果が出なかった方でも、症状が改善される可能性のある医薬品です。
この記事では、ゾレアの作用の仕方や服用方法、注意点などを解説します。
1.ゾレアとはどのような薬か
ゾレアは、オマリズマブという成分を配合した皮下注射剤です。オマリズマブには、アレルギー症状の原因となるIgEという物質に結合して、アレルギー反応を抑える作用があります。
体内に、ダニや花粉などアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)が入ると、IgEという物質が、アレルゲンと結合した状態で肥満細胞に結合します。
すると、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどアレルギーを引き起こす物質が放出され、喘息や花粉症、じんましんなど、アレルギー性疾患の症状が引き起こされるのです。
ゾレアはIgEと結合することで、IgEとアレルゲンが結合するのを妨げ、アレルギー疾患の症状を防ぎます。
ゾレアを使用できるのは、喘息、季節性アレルギー性鼻炎(スギ花粉症)、慢性的なじんましんの患者さんのうち、他の治療薬で十分な効果が出なかった人です。
2021年4月には、家で使用可能な自己注射剤として保険適用されました。
※季節性アレルギー性鼻炎(スギ花粉症)は対象外
既に発売されているシリンジタイプのほか、今後、自己注射が簡便にできるペンタイプが発売される予定です。
【参考情報】『Omalizumab Injection』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a603031.html
2.ゾレアの使い方
ゾレアの服用方法は、症状や血液中のIgE濃度、年齢、体重によって異なります。ここでは、疾患ごとにゾレアの服用方法を解説します。
<喘息>
他の治療法では喘息発作を上手に抑えられない場合にゾレアを服用します。
1回75~600mg(オマリズマブの量として)を、2週間または4週間ごとに皮下注射します。1回あたりの投与量や投与間隔は、血液中のIgE濃度と体重から設定します。
<季節性アレルギー性鼻炎(スギ花粉症)>
季節性アレルギー性鼻炎(スギ花粉症)でゾレアを服用するには、以下の条件が必須です。
・12歳以上
・ヒスタミンH1受容体拮抗薬と併用すること
1回75~600mg(オマリズマブの量として)を、2週間または4週間ごとに皮下注射します。1回あたりの投与量や投与間隔は、血液中のIgE濃度と体重から設定します。
<特発性(原因不明)の慢性じんましん>
原因が特定できない慢性的なじんましんのうち、他の治療法でもかゆみが抑えられない場合にゾレアを追加で皮下注射します。
12歳以上から服用可能で、1回300mg(オマリズマブの量として)を、4週間ごとに皮下注射します。
喘息やじんましんでゾレアを服用する場合、医師からの許可があれば自宅での自己注射も可能です。花粉症で服用する場合は、自己注射は認められておらず、通院して皮下注射を受ける必要があります。
ゾレアを注射する箇所は上腕部の外側・腹部・太もものいずれかです。一度に2本以上のゾレアを注射する場合は、3cm以上離れた箇所に注射します。
【参考情報】『最適使用推進ガイドライン オマリズマブ(遺伝子組換え)~季節性アレルギー性鼻炎~』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000565815.pdf
3.ゾレアの副作用
ゾレアの副作用として、ショック・アナフィラキシーがあります。次のような症状があらわれたら、速やかに病院を受診してください。
・気管支のけいれん、息苦しさ
・血圧の低下、血の気が引く
・じんましん
・唇、舌、のどが腫れる
上記の症状は、服用からしばらく経ったあとでも起こる可能性があります。
また、次のような症状が出る場合もあります。
・注射部位の赤い腫れ、かゆみ
・めまい
・眠気
・頭痛
これらの症状は、すぐに改善されることが多いのですが、心配なら医師や薬剤師に相談しましょう。
また、ゾレアを服用すると眠気が出るため、服用後しばらくは車や機械類の運転は避けてください。
4.使用上の注意点
ゾレアは、喘息の発作を抑える薬ではありません。発作が起こり、咳や息苦しさが強くなってきた場合は、医師から処方された発作治療薬(リリーバー)を服用してください。
妊娠中や授乳中の方は、ゾレアを使用する前に医師や薬剤師に相談してください。妊娠中や授乳中でも、ゾレアの使用が適切な場合があります。
ゾレアが服用できるのは、喘息の場合は6歳以上、季節性アレルギー性鼻炎(スギ花粉症)や特発性じんましんの場合は12歳以上と決められています。また、体重が20kg未満の人は使用できません。
今までに、医薬品や食べ物などでアレルギー症状が出たことがある人は、医師に相談してください。ゾレアは、天然ゴム(ラテックス)アレルギーがある人には使用できないため注意しましょう。
【参考情報】『天然ゴム製品の使用による皮膚障害は、ラテックスアレルギーの可能性があります』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000158833.pdf
ゾレアを自宅で服薬する場合は、医師や薬剤師の説明の通りに自己注射をしてください。予定日に注射ができなかった場合は、必ず医師に相談しましょう。
使用前のゾレアは、外箱に入れたまま冷蔵庫(2〜8℃)に保管してください。一度使ったゾレアは再使用せず、薬が残っている場合も指示された容器に破棄してください。
5.ゾレアの薬価
ゾレアの1本あたりの価格(2024年8月調べ)は次のとおりです。
・ゾレア皮下注用150mg 22755円/瓶
・ゾレア皮下注75mgシリンジ 11883円/筒
・ゾレア皮下注150mgシリンジ 21786円/筒
・ゾレア皮下注75mgペン 11927円/キット
・ゾレア皮下注150mgペン 21830円/キット
・ゾレア皮下注300mgペン 40091円/キット
ゾレアの代わりになるようなジェネリック医薬品や市販薬はありませんが、喘息に使用できる皮下注射薬には、ゾレアのほかにヌーカラなどがあります。
6.おわりに
ゾレアは非常に高価な薬ではありますが、基本的な治療だけでは喘息の症状が改善しない場合、ゾレアを追加することで効果が出る可能性はあります。
吸入ステロイド薬をはじめとした喘息の治療薬を、医師の指示通りに服用しても症状がよくならない場合は、ゾレアのような新しい薬も治療の選択肢となるでしょう。