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喘息治療に用いる去痰薬「クリアナール」の特徴と効果、副作用

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)

クリアナールは、「去痰薬」に分類される医薬品です。喘息の治療では、痰を出しやすくして呼吸をラクにするために処方されることがあります。

この記事では、クリアナールの特徴や副作用、注意点などを解説します。初めて使う方も、使っているうちに疑問点が出てきた方も、ぜひ参考にしてください。

1.クリアナールとはどのような薬か


クリアナールは、フドステインという有効成分を配合した去痰薬です。

【参考情報】『Fudosteine』National Library of Medicine
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Fudosteine#section=Information-Sources

去痰薬は、主に以下の4つに分類されます。

・粘液溶解薬
痰の粘り気を低下させて排出しやすくする

・粘液修復薬
気道の状態を修復して、気道粘液を正常化させる

・粘液潤滑薬
肺サーファクタント(肺胞の表面を薄く覆っている物質)の分泌を増やし、気道粘液の粘り気を低下させる

・気道分泌細胞正常化薬
気道分泌細胞に働きかけて、気道粘液が過剰に出ないよう抑制する

クリアナールは「気道分泌細胞正常化薬」に分類され、痰の産生と分泌を抑える効果があります。そのため、痰の量が多い場合には、クリアナールを使用することで症状の改善が期待できます。

クリアナールには、「クリアナール錠200mg」という錠剤のほか、「クリアナール内用液8%」という液体もあります。

加齢などにより飲み込む力が低下している人は、錠剤を飲みにくいと感じるかもしれません。そのような場合は、内用液を使用するのも良いでしょう。

クリアナールは喘息以外にも、肺結核、気管支拡張症、じん肺症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、非定型抗酸菌症、びまん性汎細気管支炎などの呼吸器疾患でも処方されることがあります。

◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

2.クリアナールの使い方


この章では、クリアナールの基本的な服用方法を説明します。年齢や症状などによって量が増減されることもあるので、医師や薬剤師に自分の服用量を確認しておきましょう。

・錠剤(クリアナール錠200mg)

1回2錠を、1日3回、食後に服用します。水かぬるま湯と一緒に飲んでください。

・内用液(クリアナール内用液8%)

1回5mlを、1日3回、食後に服用します。

3.クリアナールの副作用


クリアナールの主な副作用として、以下のものがあります。

 ・食欲不振

 ・吐き気

 ・頭痛

クリアナールを服用後に体調の変化を感じた場合、その変化が薬の影響なのか症状の変化によるものかを判断するために、医師や薬剤師に相談することが重要です。

めったにありませんが、重篤な副作用として以下があります。

 ・肝機能障害

 ・皮膚粘膜眼症候群

 ・中毒性表皮壊死症

まれに、肝機能の指標であるASTやALTが上昇し、肝機能障害や黄疸(おうだん)が現れることがあります。

黄疸とは、肝機能の障害により、ビリルビンという色素が肝臓で代謝されなくなることで、皮膚や目の白い部分に色素が沈着して黄色くなる状態です。

皮膚粘膜眼症候群は、別名スティーブンス・ジョンソン症候群とも呼ばれる病気です。高熱が出て、発疹や発赤、やけどのような水ぶくれなどが皮膚や目、口の粘膜に現れます。

【参考情報】『スティーブンス・ジョンソン症候群』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1a02.pdf

中毒性表皮壊死症は、別名ライエル症候群と呼ばれ、高熱や目の充血、やけどのような水ぶくれ、皮膚のただれなどの症状が見られます。

【参考情報】『中毒性表皮壊死症』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1a06.pdf

医薬品を服用してから高熱や皮膚・粘膜の異常などが見られた場合は、皮膚粘膜眼症候群や中毒性表皮壊死症などの可能性も考えられるので、医師や薬剤師に相談してください。

4.使用上の注意点


この章では、クリアナールを服用する際の注意点を紹介します。

<妊婦>
妊娠中や妊娠の可能性がある人は、服薬前に主治医に相談してください。動物実験では、胎児に影響があったことが報告されているので、医師は患者さんの状態を見ながら、服用するかどうかを決める必要があります。

また、動物実験では母乳への移行も報告されているので、授乳中の人も主治医に相談してください。

<小児>
クリアナールの小児への臨床試験は行われていないため、お子さんにはムコダインなど、別の去痰薬を処方するのが普通です。

◆「ムコダイン」の特徴と効果、副作用>>

<高齢者>
高齢になると肝臓や腎臓の機能が低下し、薬が体内に長く残ることが多くなるため、副作用のリスクが高まります。

そのため、高齢者には肝機能や腎機能を考慮しながら、クリアナールの投与量を減らすことがあります。

<肝機能障害の患者>
クリアナールの重大な副作用の一つに肝機能障害があります。肝機能を悪化させる可能性があるため、肝機能障害のある人への投与には注意が必要です。

<心臓に障害がある患者>
クリアナール自体では報告されていませんが、類似した構造の医薬品で心不全の悪化が報告されています。

そのため、心臓に問題がある場合、クリアナールの使用には注意が必要です。

5.クリアナールの薬価


クリアナールの薬価(2024年8月調べ)は以下となります。

 ・クリアナール錠200mg  1錠 10.1円

 ・クリアナール内用液8% 1ml 7.8円

クリアナールと同じ成分の薬には「スペリア」があります。

6.おわりに

クリアナールのほかにも以下のような去痰薬があり、痰の量や粘り気の強さなどによって使い分けられています。

 ・ムコダイン

 ・ムコソルバン

◆「ムコソルバン」の特徴と効果、副作用>>

喘息の患者さんに限らず、「痰が多い」「痰が絡む」場合は、呼吸器疾患の可能性があります。

市販薬を使ってもよくならず、症状が2週間以上続いていたら、呼吸器内科を受診して自分に合った薬を処方してもらいましょう。

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