喘息と副鼻腔炎の関係と治療による効果について
喘息の患者さんで、鼻水や鼻づまりが多い人は、もしかすると副鼻腔炎を合併しているかもしれません。
その場合、副鼻腔炎を治療することで、喘息の症状が改善される可能性があります。
喘息は呼吸器の病気、副鼻腔炎は鼻の病気ですが、これら2つの病気は併発しやすく、互いに影響を及ぼしあうことがあります。
この記事では、喘息と副鼻腔炎の関係や治療について説明します。
目次
1.喘息とはどのような病気なのか
喘息とは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が生じる病気です。
<主な症状>
・咳
・喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー・ゼイゼイという特有の呼吸音)
・呼吸の苦しさ
・胸の痛み
喘息の原因は、ダニや花粉などが原因のアレルギー性と、過労やストレスなどが引き金となる非アレルギー性に分けられます。
アレルギー性は子ども、非アレルギー性は大人に多いと言われています。
喘息の人の気道は、炎症により過敏になっているため、健康な人なら反応しない弱い刺激にも反応して、咳などの症状が現れます。
特に、夜間から朝方にかけては、自律神経の影響によって気道が狭くなるため、症状が出やすくなります。
アレルギーが原因の患者さんは、花粉が飛散する時期や、梅雨などカビが発生しやすい時期に、症状がひどくなることがあります。
2.副鼻腔炎とはどのような病気なのか
副鼻腔とは、鼻の内側(鼻腔)を囲むように位置する空洞で、両目の間、額、目の奥、目頭の内側、そして頬の下に左右4つずつ、合計8つあります。それらの中には空気が入っており、鼻腔とつながっています。
この副鼻腔が、細菌やウイルスに感染して炎症が起こると副鼻腔炎となります。副鼻腔炎は、大きく分けて急性と慢性の2種類があります。
2-1.急性副鼻腔炎
急性副鼻腔炎は、発症してから4週間以内のもので、原因の多くは風邪などを引き起こすウイルスや細菌の感染によるものです。
<主な症状>
・鼻水
・鼻づまり
・顔面の痛み
・後鼻漏(こうびろう)
・嗅覚障害
鼻水には膿(うみ)が混じっているため、黄色や緑色となり粘り気があります。この鼻水がのどに流れることを後鼻漏といい、咳やのどの不快感にもつながります。
炎症によって副鼻腔の粘膜が腫れると、眼や頬などに痛みが現れることがあります。また、空気の通り道が狭くなるので鼻づまりなども引き起こされます。
【参考情報】『Sinus Infection (Sinusitis)』Mayo Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/17701-sinusitis
2-2.慢性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎は、症状が3ヶ月以上続くものをいい、非好酸球性副鼻腔炎と好酸球性副鼻腔炎に分けられます。
非好酸球性副鼻腔炎の主な原因は、風邪などを引き起こす細菌やウイルスによる炎症やアレルギー、鼻骨の構造の異常です。子どもから大人まで、幅広い年齢で発症する病気です。
<主な症状>
・鼻水
・鼻づまり
・後鼻漏
・鼻茸(はなたけ:キノコのような形をした膨らみ)
・嗅覚障害
この病気の患者さんは、副鼻腔が慢性的に炎症やむくみを起こしているため、膿や分泌物がうまく排出されないことが多いです。
また、炎症によって粘膜が腫れ、鼻腔とつながる出入り口が狭くなったり塞がったりしていることによっても膿がうまく輩出されず、炎症が長引きやすくなります。
好酸球性副鼻腔炎は、大人になってから発症することが多い病気です。原因ははっきりと分かってはいませんが、アレルギーや炎症に関与する白血球の一種である好酸球が増え、副鼻腔の粘膜を攻撃することで発症すると考えられています。
症状は他の副鼻腔炎と同様ですが、嗅覚障害は早期に現れます。また、鼻茸が多く、風邪などで炎症が起こるたびに大きくなり、ひどい場合は鼻腔を塞ぐこともあります。
鼻茸は手術で取り除いてもすぐに再発しやすいため治療が難しく、好酸球性副鼻腔炎は難治性の病気として指定難病に認定されています。
【参考情報】『好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4537
3.喘息と副鼻腔炎の関係について
喘息は下気道、副鼻腔炎は上気道に炎症が起こる病気です。炎症の場所は異なりますが、上気道と下気道はつながっているため、互いに影響を及ぼすことがよくあります。
例えば、副鼻腔炎による後鼻漏で咳が続くと、喘息の悪化につながりますし、鼻づまりで口呼吸が増えると、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)が口から体内に入りやすくなるため、喘息の症状が出やすくなります。
さらに、喘息の人は好酸球性副鼻腔炎を併発することが多いとされています。これは、喘息も好酸球性副鼻腔炎も好酸球が深く関与しており、症状が引き起こされる仕組みが非常に似ているためです。
好酸球は、寄生虫から体を守ったりアレルギー反応を抑えたりする重要な役割を担っています。しかし、過剰に増えたり炎症が長引いたりすると、自分の体を攻撃してしまうことがあります。
【参考情報】『Eosinophils』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/body/23402-eosinophils
増えすぎた好酸球は気道の粘膜を攻撃するため、喘息発作が起こりやすくなります。同様に、好酸球性副鼻腔炎でも好酸球が増加し、症状を引き起こします。
喘息の中でもアスピリン喘息を発症している人は、好酸球性副鼻腔炎を併発すると重症化しやすくなります。
アスピリン喘息とは、ロキソニンやアスピリン、ボルタレンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:エヌセイズ Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの略)を内服すると喘息発作が起こる病気です。
非ステロイド性抗炎症薬は炎症を抑える一方で、分解の過程でロイコトリエンという物質を生成します。ロイコトリエンが増えると気道や気管支が狭くなり、喘息発作が起こりやすくなります。
副鼻腔炎があると喘息のコントロールも難しくなるため、日頃から鼻水や鼻づまりなどの鼻の症状には注意しなければいけません。
もし副鼻腔炎の併発が疑われる場合は、主治医に相談しましょう。症状や重症度に応じて、適切な治療を受ける必要があります。
4.喘息の症状は副鼻腔炎の治療で改善するのか
喘息の患者さんで副鼻腔炎を併発している人は、副鼻腔炎の治療を行うと、喘息の症状が軽減される可能性があります。
4-1.急性副鼻腔炎の治療
急性副鼻腔炎は、抗菌剤の服用や、ネブライザーという医療機器を使って鼻から薬剤を吸入する薬物療法で、ほとんどが改善します。
ネブライザーを使うと、薬の粒子が細かくなり、副鼻腔に届きやすくなります。また、薬を飲みこむ力が弱い高齢者なども、確実に薬を吸入することができます。
4-2.慢性副鼻腔炎の治療
慢性副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎と同様の治療に加え、マクロライド系抗菌剤を少量ずつ2~3ヶ月かけて投与して、改善をはかります。
好酸球性副鼻腔炎の場合は、経口ステロイド薬やステロイド点鼻薬を使用します。また、鼻水に膿があるときやアレルギーが原因の場合は、抗菌薬や抗アレルギー薬を用いることもあります。
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重症の場合や難治性のケースでは、手術によって鼻茸を完全に取り除きます。しかし、手術を行っても約半数は再発することがあり、アスピリン喘息を発症している場合は再発のリスクがさらに高まります。
手術後も長期にわたって副鼻腔の状態を定期的に観察しつつ、継続して治療を行うことが重要です。
副鼻腔炎の治療により後鼻漏や鼻づまりが軽減されると、咳や口呼吸も改善され、気道への刺激が減ってきます。また、好酸球による炎症が抑えられることで、喘息の症状も和らいできます。
5.おわりに
副鼻腔と気道はつながっているため、副鼻腔炎を発症すると気道の炎症に影響が及び、喘息の症状が悪化しやすくなります。
「風邪をきっかけに鼻水や鼻づまりがひどくなった」「鼻の症状が出ると喘息が悪化する」など、副鼻腔炎の疑いがある喘息患者さんは、早めに主治医に相談しましょう。
季節の変わり目に鼻炎症状が出る場合や、アレルギー性鼻炎の既往がある場合も、鼻炎症状を契機として喘息が悪化する場合がありますので、早めに主治医へ相談してください。
副鼻腔炎の治療により鼻の症状が改善すれば、喘息の症状も改善する可能性もあるので、適切な治療につなげていきましょう。