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命に関わる喘息の重積発作!治療と予防の方法を解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)

喘息の患者さんは、気道の炎症がうまくコントロールできていないと、重積発作と呼ばれる重症の発作を引き起こすことがあります。

重積発作が起こると、呼吸が止まったり、意識障害を伴ったりする危険があり、命に関わることもあります。

この記事では、喘息の重積発作の原因や治療方法についてくわしく解説します。予防法も紹介していますので、喘息発作を繰り返している方はぜひ参考にしてください。

1.喘息とはどのような病気か


喘息になっても、適切な治療を続ければ、健康な人と変わらない生活を送ることも可能です。

しかし、自己判断で治療を中断したり薬を減らしたりすると、気道のリモデリングが起こり、重症化する恐れがあります。

1―1.喘息の症状

喘息とは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が生じる病気です。


【主な症状】

 ・激しい咳

 ・息苦しさ

 ・胸の痛みや違和感

 ・喘鳴(ゼイゼイ・ヒューヒューという異常な呼吸音)

◆「喘鳴」についてくわしく>>


炎症により過敏になった気道は、冷たい空気や煙などのわずかな刺激にも反応し、症状が現れます。

症状は、夜間から早朝にかけて強くなったり、特定の場所や時期で強くなることがあります。

1―2.喘息の原因

喘息の原因には、アレルギー性と非アレルギー性があります。

アレルギー性は子どもに多く、ダニやカビ、花粉、ペットの毛などのアレルゲンに反応して症状が現れます。

非アレルギー性は大人に多く、呼吸器感染症やストレス、過労、運動などがきっかけで発症しますが、原因がわかりにくいことも多いです。

◆「大人の喘息|子供の喘息との違いと特徴」>>

1―3.気道のリモデリングに注意

喘息は、適切な治療をしないと「気道のリモデリング」が起こることがあります。

気道のリモデリングとは、長期間の炎症によって気道が厚く硬くなり、狭くなってしまうことです。この状態になると、たとえ症状が落ち着いても、気道が元の状態には戻らなくなります。

気道が狭くなると、喘息のコントロールが難しくなり、気管支拡張薬やステロイド薬が効きにくくなることがあります。その結果、発作を起こしやすくなり、病気が重症化しやすくなります。

気道のリモデリングを防ぐには、早い段階から適切な治療を受け、炎症をしっかりコントロールすることが大切です。

【参考情報】『Airway remodeling in asthma』Journal of Clinical Investigation
https://www.jci.org/articles/view/8124

2.喘息の発作とは


喘息の発作は、重症度によって「小発作」「中発作」「大発作」に大きく分けられます。

2-1.小発作

咳や軽い喘鳴が現れます。苦しいけれど横になることはできる状態です。

普段通りに会話や歩行はできますが、急ぐと息苦しさを感じます。ただし、安静にしていれば呼吸は落ち着き、眠ることも可能です。血中酸素飽和度は96%以上を維持しています。

◆「血中酸素飽和度」とは>>

小発作は比較的軽いため、素早く気管支拡張薬を吸入すれば、症状を抑えられることが多いです。発作が落ち着いた後は、自宅で様子を見ることができます。

2-2.中発作

咳や喘鳴がひどくなり、息苦しさのため横になるのがつらい状態です。

会話はしづらく、歩くのもやっとの状態になります。また、呼吸が苦しくて、眠れても途中で目が覚めてしまうことがあります。血中酸素飽和度は91~95%です。

中発作が起きたら、すぐに気管支拡張薬を吸入しましょう。吸入後30分経っても症状が改善しなければ、救急外来を受診する必要があります。

◆「気管支拡張薬・ベネトリンの特徴と効果、副作用」>>

外来で治療を受け、1時間ほどで症状が落ち着けば自宅に帰れますが、改善が見られない場合は入院が必要になることもあります。

2-3.大発作

呼吸困難や喘鳴が激しくなり、苦しくて動けなくなる状態です。会話や歩行ができず、眠ることも困難になります。

血中酸素飽和度は90%以下に低下し、酸素が不足して顔や唇、指先が青紫色になる「チアノーゼ」が現れます。さらに、脳への酸素供給が不足すると、意識がもうろうとしてくることもあります。

【参考情報】『チアノーゼを知る』神奈川県立こども医療センター
https://kcmc.kanagawa-pho.jp/data/media/kanagawa-pho/page/department/home_medical_support/2021_iryoucare2-1.pdf

大発作は命に関わるため、すぐに救急車を呼ぶか、救急外来を受診し、適切な治療を受ける必要があります。

救急外来で治療を受け、症状が落ち着けば入院して治療を続けます。しかし、治療をしても改善しない場合、呼吸が止まったり意識が低下したりする危険があるため、すぐに集中治療室(ICU)での治療が必要になります。

◆「もしも喘息発作が起こったら~緊急時の対処法~」>>

3.喘息の重積発作とは


重積発作とは、喘息発作が24時間以上続く状態のことです。この状態になると、気道が非常に狭くなり、ほとんど息ができないほどの強い呼吸困難が生じます。

重積発作が起こると、数時間以内に呼吸が止まったり、命の危険にさらされたりする可能性があるため、特に注意が必要です。

4.重積発作の治療


重積発作が起こった場合は、集中治療室で全身の状態を管理しながら、適切な治療を行う必要があります。

喘息による死亡を防ぎ、肺機能を回復させるために、以下のような治療を実施します。

4-1.酸素吸入

発作が起こると、気道が狭くなって空気の流れが制限されるため、体内の酸素濃度が低下します。そのため、酸素を吸入して血中酸素濃度を保ちます。

酸素吸入は、マスクやカヌラ(鼻から酸素を送るチューブ)を使用して行います。これにより、通常の空気よりも濃い酸素を体内に供給することができます。

酸素吸入を行うことで、体内の酸素濃度が改善され、呼吸困難が軽減し、喘息発作をコントロールする助けになります。

4-2.気管支拡張薬

喘息発作が起こると、炎症や痰で気道が塞がれて呼吸がしにくくなります。そのため、気道を広げて呼吸を楽にするために、気管支拡張薬を使用します。

重積発作の場合は、ネブライザーという吸入器を使って気管支拡張薬を投与します。ネブライザーを使うと、薬が小さな粒子となって霧状になり、肺の奥まで届きやすくなります。

◆「ネブライザー」についてくわしく>>

4-3.ステロイド薬

気道の炎症がひどくなると気道が狭くなり、呼吸ができなくなることがあります。そのため、発作時に早急に炎症を抑えるためにステロイド薬を用います。

発作時にはステロイドを通常より多く投与する必要があるため、点滴で投与することが一般的です。

◆「ステロイド薬・プレドニゾロンの特徴と効果、副作用」>>

4-4.アドレナリン皮下注射

上記の治療を行っても効果が見られない場合は、アドレナリンを皮下注射することがあります。

アドレナリンは、気管支の筋肉を緩めたり、気道のむくみを取り除いたりする働きがあります。非常に強い効果があり、重症の場合に使用されることが多いです。

ただし、効果が期待できる一方で、副作用が強く現れることもあります。そのため、心電図などでモニタリングを行いながら、慎重に投与する必要があります。

【参考情報】『Epinephrine (injection route)』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements/epinephrine-injection-route/description/drg-20072429

4-5.アミノフィリン点滴

アミノフィリンは、気管を広げる効果と炎症を抑える効果がある薬です。ただし、過剰に投与すると、副作用として中毒症状が現れることがあるため注意が必要です。

【参考情報】『Aminophylline』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a601015.html>

軽度の副作用には、吐き気や頭痛、動悸があります。重度の場合には、意識障害やけいれん、横紋筋融解症などが起こることがあります。

【参考情報】『お薬の副作用としての横紋筋融解症』徳島県薬剤師会
https://www.tokuyaku.or.jp/ippan.html?view=article&id=58:2015-01-20-03-03-26&catid=33:okusuri-topics

4-6.人工呼吸器

治療を行っても酸素が改善しない場合は、気管内挿管を行い、人工呼吸器で呼吸管理を行います。

人工呼吸器を使用すると、確実に肺まで酸素を届けられ、体の酸素濃度を維持できます。また、呼吸筋を休められ、呼吸のしんどさを軽減できます。

しかし、気道狭窄や炎症を抑える効果はありませんので、同時に喘息の治療を行います。

5.発作を予防するには


喘息の人の気道は、わずかな刺激にも過敏に反応してしまうため、どんなに注意していても発作が起こることがあります。

しかし、発作のきっかけをできるだけ減らすことは可能です。

5-1.薬を正しく使用する

喘息の人の気道は、症状が出ないときでも炎症が続いているため、炎症を抑えるためにはコントローラー(長期管理薬)による継続的な治療が必要です。

症状があるときもないときも、コントローラーを毎日使用して、発作の出にくい状態を保っていきましょう。

ただし、コントローラーを使っていても、何らかのきっかけで発作が起こることはあります。その際は、リリーバー(発作治療薬)を使用して気管を広げ、発作を抑えるようにしましょう。

リリーバーで一時的に発作が治まった後も、発作が頻繁に起こる場合は病院を受診し、コントローラーの見直しを検討することが必要です。

◆「喘息治療に使う吸入薬の種類と特徴、副作用」>>

5-2.アレルゲンを避ける・減らす

アレルギー性の喘息がある人は、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)を避けたり減らしたりすることで、喘息発作につながる些細な刺激を減らしましょう。


【主なアレルゲン】

 ・ダニ

 ・ホコリ

 ・花粉

 ・ペットの毛

 ・タバコの煙


特に寝室はアレルゲンが溜まりやすい場所なので、こまめに掃除や洗濯を行い、ダニやホコリを減らしまよう。また、空気清浄機で部屋の空気を清潔に保つのもおすすめです。

◆「花粉症で喘息の症状が悪化する理由と対策」>>

5-3.規則正しい生活とストレス管理

喘息発作は、生活習慣の乱れやストレスがきっかけで引き起こされることがあります。十分な睡眠をとり、規則正しい生活リズムを維持するようにしましょう。

また、リラクゼーションによって体の疲れを取ったり、趣味を楽しむことで、ストレスを発散できるようにしましょう。

◆「ストレスが喘息に及ぼす影響とは?」>>

5-4.適度な運動

軽い有酸素運動は肺機能の向上に役立ちます。無理のない範囲で、自分に合った運動を継続するようにしましょう。

ただし、喘息の人は、気温の低下や空気の乾燥、砂埃などの刺激で発作が引き起こされることがあります。また、激しい運動を長時間行うことで呼吸回数が増え、発作が誘発されることもあります。

発作を起こしにくいのは、水泳のような室内でできる運動や、ウォーキングのような自分のペースでできる運動です。

やりたいスポーツがある人は、まずは医師に相談してみましょう。その上で、症状をコントロールする方法や運動時の注意点を確認しましょう。

◆「喘息の方におすすめのスポーツと、運動時の発作を予防する対処法」>>

5-5.呼吸器感染症の予防

風邪やインフルエンザのような呼吸器感染症にかかると、喘息の症状が悪化する恐れがあります。

手洗いやうがいといった基本的な感染対策はしっかりと行いましょう。また、流行時期には人混みを避けたり、マスクを着用したりして、感染リスクを減らすことが大切です。

インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、肺炎球菌などには予防接種があるので、重症化を防ぐためにも受けておきましょう。

◆「呼吸器感染症の主な種類と予防法」>>

5-6.定期的な通院

喘息は慢性疾患であるため、継続的な治療と定期的な通院が必要です。

受診時には、診察や検査を通じて「現在の治療で症状が十分にコントロールできているか」「発作が増えていないか」など、体調の変化や薬の効果を確認します。その結果に基づき、薬の調整や治療計画の更新が行われます。

定期的な通院に加え、呼吸器感染症が悪化したときや、喘息発作が増えて心配なときは、早めに受診して症状の悪化を防ぎましょう。

◆「喘息が定期通院を必要とする理由とは?」>>

6.おわりに

喘息の重積発作は、命にかかわる危険な発作です。発作を予防するためには、服薬や通院を継続して、基本的な管理を怠らないようにしましょう。

さらに、いつ発作が起きても対応できるよう、病院を受診したり、救急車を呼ぶタイミングについて、主治医に確認しておきましょう。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

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