睡眠時無呼吸症候群を治療しなければ、「心臓病」「脳卒中」「交通事故」を起こす危険性が高まります。
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に無呼吸状態になる病気です。英語ではSleep Apnea Syndromeといい、略してSAS(サス)とも呼ばれます。
無呼吸とは、医学的には10秒以上の呼吸停止と定義され、この無呼吸が1時間に5回以上、または7時間の睡眠中に30回以上ある場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
無呼吸になると、眠っている間にそのまま死んでしまうのでは?と不安に思うかもしれませんが、この病気が直接の死因になることはまずありません。
しかし、睡眠時無呼吸症候群が引き金となり、命にかかわる病気になったり、社会的な信用を失う恐れがあります。
睡眠中に無呼吸を繰り返していると、心臓や脳、血管に大きな負担がかかってしまいます。すると、高血圧や心疾患などの生活習慣病になる可能性が高まります。
また、深い睡眠がとれずに昼間に眠くなり、集中力が低下することで、仕事のパフォーマンスが落ちたり、交通事故や労働災害を招く恐れもあるのです。
代表的な自覚症状は以下のとおりです。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、高血圧や心疾患のほか、脳卒中、糖尿病、勃起障害(ED)のリスクも高くなります。
また、交通事故に関しても、重症の睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、飲酒している人より運転操作ミスが多いというデータもあります。
【参考情報】『Fatigue, alcohol and performance impairment』Nature https://www.nature.com/articles/40775
日本でも、相次ぐ交通事故、電車の運転事故の影響から道路交通法が改正され、眠気を訴える疾患に罹患していて治療を受けていない方には、2014年より運転免許の発行・更新をしないことになりました。
睡眠時無呼吸症候群の程度を測る指標として、睡眠1時間あたりの無呼吸および低呼吸の合計回数であるAHI(Apnea Hypopnea Index)があります。AHIが5~15は軽症、15~30は中等症、30以上は重症と分類されます。
世界的に権威のある医学雑誌『Lancet Respiratory Medicine』に掲載された研究によると、世界中で約9億3600万人が軽度、4億2500万人が重度の無呼吸症候群であると推測されています。
【参考資料】『Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis』Lancet Respiratory Medicine https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(19)30198-5/fulltext
睡眠時無呼吸症候群に対して効果が立証されている治療法として、鼻にマスクを装着して気道に空気を送り込むCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)療法があります。
マスクは夜間寝ているときのみに使用し、寝ている間に気道が塞がらないようにします。この療法によっていびきや無呼吸が改善すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが、健康な人と同程度まで抑えることができます。
睡眠時無呼吸症候群は、自分では気づきにくいことと、「たかがいびきくらいで」と軽く見られがちなどの理由により、まだまだ治療を受けている方が少ないのが現状です。
しかし、適切に治療すれば無呼吸が解消され、生活習慣病や眠気などの症状もきちんとコントロールすることができます。
いびきや昼間の眠気に悩んでいる人は、快適で安全な生活を送るためにも、ぜひ病院を受診して相談してください。
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