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栄養カウンセリングで患者さんのやる気スイッチを見つける

医学博士 三島 渉
(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)

最終更新日 2024.4.15


当院クリニック理事長 三島著書「栄養こそが最高の医療である」より、クリニックで行っているカウンセリングの事例をご紹介させて頂きます。
当院では管理栄養士によるカウンセリングを治療の柱のひとつとして提供しています。
患者さんからのご質問やご相談のなかから、特に多いものを症例として選んでおります。

1.背景


今回の患者さんは脂質異常と脂肪肝を指摘され来院された、40代の男性Cさんです。
働き盛りの男性は、外食が多いせいか、糖質が過剰になりメタボ健診で引っかかる方が多くおられます。
Cさんも同様のタイプで、職場の健康診断で指摘され栄養カウンセリングを受けに当院に来られました。
当院に来られた時点で、Cさんの体重は97キロ程でした。
普段の食生活は、朝食は食べずに、昼食は丼物と麺類、夜も外食が多くカップラーメンとビールなどを好んで食べておられるとのお話でした。

2.原因


Cさんのカウンセリング内容から、糖質過剰による肥満で全身に慢性炎症が起きている状態だと判断しました。
さらに、肝臓に中性脂肪が蓄積して脂肪肝となっていました。
又、Cさんには生活習慣以前に大きな課題がありました。
ご自身に「なんとかしなくては」というやる気が見られないのです。
健康診断で指摘されたので、しぶしぶ来ただけなので危機感がなく、食事について指摘されてもできないことはできませんという姿勢でした。
あまり、これダメ、あれダメって言わないで欲しいという雰囲気が、Cさんから感じられました。

3.Cさんに向けた指導方針


Cさんの場合、ご本人に改善しようという意欲が低いので、あまり細かく指導してもかえって逆効果になると判断した管理栄養士は、指導ではなくまずはCさんのお話を聞くことに徹しました。
食べる事がすきだから、今の食生活を変えたくない。
困るのは階段を登る時に息切れがする程度、太っていて何が悪いんですか?
特に体重を落としたいとは思っていないとのお話でした。

管理栄養士は、Cさんの話を否定せずに耳を傾けながら「丼物と麺類を一緒に食べるのは辞めてみませんか?」と実行できそうな事から提案を行いました。
しかし、本人にやる気もないのでなかなか変化はみられませんでした。

4.やる気スイッチ


カウンセリングを始めて数カ月がたったある日、突然Cさんがこう言いました。
「ずっとお話してもらっているのに、何も改善できなくってすごく申し訳ないです。これからがんばります。」
誰に命令されたわけでもなく、Cさんが自分で自分の行動にやる気スイッチを入れた瞬間でした。
数カ月間のカウンセリングの中で、管理栄養士との間に信頼関係が生まれ、一生懸命話を聞いてくれているこの人に言われた事を、実行できていない自分を変えたいと思われたのかも知れません。

5.アドバイス


具体的な食事の改善がスタートしました。
まずは、1回の食事中のお米の量を今まで200gだったところを150gに減らすことからはじめました。
そして糖質の代謝をうながすビタミンB1をはじめとしたビタミンB群の補給のためのサプリメントを使用することにしました。
又、栄養改善と並行して適度な運動もおすすめし取り組んで頂きました。

体重が一旦減った後、年末年始期間中の暴飲暴食でリバウンドが起きてしまいましたが、その時には本人が現実をきとんと認識しておられたのでさほど心配はしていませんでした。
その後も、ご飯と麺類の組み合わせをやめ、運動量も増やし一時は99キロあった体重を90キロ近くまで減らすことができました。
脂肪肝も少しずつ改善されています。
これからも栄養カウンセリングを継続して頂き、一歩一歩着実に糖質制限に取り組んで貰いたいと思っています。

6.おわりに

Cさんのケースでは、当院がカウンセリングに取り入れている選択理論心理学が効果を発揮しました。
通常、管理栄養士は栄養の専門家ではありますが、カウンセリング技術を専門に学んでいません。
その為、患者さんの意欲が低いといくら正しい情報をお伝えしても、行動を変えるには至らない事が多く、改善につながりません。
食事指導を受けても殆ど成果に繋がらない大きな要因です。

当院で行う栄養カウンセリングでは、選択理論心理学を学んだ管理栄養士が内発的動機づけの技術を使うことで、患者さん自らの選択による行動を促し治療効果を発揮します。
これが、普通に行われている栄養指導と当院の栄養カウンセリングの大きな違いです。
当院の栄養カウンセリングを是非一度体験してみて下さい。

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