当院では治療の一環として分子栄養学と選択倫理心理学を融合した、当院独自の栄養カウンセリングを行っております。
患者様の生活の質を向上させ、健康へ導く手助けをするために患者様1人1人にあった食事療法を提案します。
健康な体を作り上げるためには、様々な栄養素が必要になります。今回はその1つとして「鉄分」のご紹介をさせていただきます。
1.鉄分とは?
鉄分は、私たちの体にとって必要不可欠なミネラルの一種です。
血液中のヘモグロビンを構成し、体内に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。
1-1 鉄分の種類
鉄分は大きく分けてヘム鉄と非ヘム鉄の2種類に分けられます。
【ヘム鉄】
肉や魚などの動物性食品に多く含まれる鉄分です。
非ヘム鉄に比べて吸収率が高く(5~6倍)、体内に効率よく吸収されます。
以下にヘム鉄を含む食材をいくつかご紹介します。
・赤身肉:牛肉、豚肉、レバー
・魚介類:カツオ、マグロ、サバ、イワシ、あさり、しじみ
【非ヘム鉄】
野菜や穀物などの食物性食品に多く含まれる鉄分です。
ヘム鉄に比べて吸収率が低く、ビタミンCなどの他の栄養素と一緒に摂取することで吸収率が高くなります。
以下に非ヘム鉄を含む食材をいくつかご紹介します。
・豆類:大豆、黒豆、ひよこ豆
・海藻類:わかめ、ひじき
・緑黄色野菜:ほうれん草、ケール、ブロッコリー
・ナッツ類:アーモンド、カシューナッツ
これらの食材を普段の食生活に、バランスよく取り入れることで、効率よくヘム鉄、非ヘム鉄の摂取量を増やすことができます。
また、鉄のフライパンや鍋で調理することで、調理中に鉄分が食品に溶け出し、鉄分の摂取量を増やす手助けをしてくれる効果もあります。
1-2 鉄分の効果
鉄分は私たちの健康な体を作るために、なくてはならない栄養素で、様々な重要な役割を担っています。
また健康維持だけでなく、肌や髪にとって大切なコラーゲンを生成するのに欠かせない栄養素でもあります。
さらに鉄を適量摂取することで運動能力や学習能力の向上が期待できます。
2.鉄分の働きについて
鉄分の主な働きは以下の通りです。
・エネルギー産生
食べ物を体のエネルギーに変換するミトコンドリアという細胞小器官で大切になります。
鉄を十分に摂取することで元気の源をつくる手助けになります。
・酸素運搬
血液中のヘモグロビンの主要成分となり、肺から全身の組織へ酸素を運ぶのを助けます。
この働きがスムーズに行われることで、私たちは活発に活動することができます。
・免疫機能の維持
免疫細胞の働きをサポートし、感染症に対する防御力を高めてくれます。
・細胞の増殖
新しい細胞を作るのに鉄分が必要になります。
これらの機能を維持するために、バランスの取れた食事をとり、適切な量の鉄分を摂取することが重要です。
2-1 鉄分の功能
鉄分の主な機能は、体内の酸素運搬です。
鉄はほぼすべての生物に必要ですが、特にミトコンドリアの働きには必要不可欠です。
鉄と結びついて運ばれた酸素により、細胞中のミトコンドリアでエネルギーが生み出されていきます。
そのため「鉄分」はスタミナ作りには欠かせないミネラルとなります。
2-2 鉄分不足になるとどうなる?
鉄分が不足すると、血液中に含まれるヘモグロビンの量が減少し、結果として体中の細胞に酸素が行き渡りづらくなります。
これにより貧血と呼ばれる状態になり、さらに以下のような症状が現れることがあります。
・貧血:めまい、立ちくらみ、息切れ、肌の蒼白など
・疲労感:体内の酸素運搬能力が低下し、エネルギー不足や持続的な疲労感が生じます。
・免疫力の低下:鉄分は免疫機能にも関与しており、感染症にかかりやすくなります。
・集中力の低下:脳への酸素供給が減少することで集中力や注意力が低下してしまいます。
3.鉄分の摂取量
鉄分の一日の摂取量の目は以下になります。
・成人女性(18歳~64歳)10.5mg/日
・成人女性(65歳以上)6.5mg/日
・成人男性(18歳~64歳)7.5mg/日
・成人男性(65歳以上)7.0mg/日
鉄分の一日の摂取基準量は年齢、性別などによって異なります。
一般的には男性よりも女性の方が多くの鉄分が必要とされています。
これは、月経による出血で鉄分が失われてしまうためです。
4. 鉄分の摂取方法
1、2章では鉄分についての説明をお伝えしました。ここからは不足しがちな鉄分を効率よく取る方法をご紹介します。
鉄分の効果的な摂取方法にはいくつかのポイントがあります。
【鉄鍋、フライパン、鉄の球を使う】
1章でも少しご紹介しましたが、鉄でできた調理器具を使用することで、食品から鉄分が溶け出し手軽に鉄分を摂取することができます。
また鍋に入れて沸かすだけで鉄分を摂取できる「鉄の球」をご存じでしょうか。
安全性に問題はなく効率よく鉄分を補給できるので、食材と合わせてより効果が高くなります。
卵型やキャラクターデザインのものまであり、鍋やフライパンに比べて安価なので気軽に活用してみてください。
【吸収率をアップをさせる栄養素を同時に摂取する】
・ビタミンC
非ヘム鉄の吸収を促進します。
ビタミンCはオレンジジュース、レモンなどの柑橘類だけでなく、ピーマン、ブロッコリー、大根といった緑黄色野菜にも豊富に含まれています。
・酸性食品
トマト、お酢などの酸性食品を料理に加えることで、鉄分の溶出を助けてくれます。
・タンパク質
肉や魚に含まれるタンパク質も非ヘム鉄の吸収率を高めてくれる効果があります。
例えば非ヘム鉄のほうれん草を炒めるときにタンパク質が豊富なお肉と炒めることで鉄分の吸収率がより上がります。
【鉄分の吸収を阻害するものを避ける】
・タンニン
お茶やコーヒー、紅茶などに含まれ、非ヘム鉄の吸収を阻害してしまう成分です。
食事の際は水にし、食事中や食後すぐの大量飲用はなるべく避けた方がよいでしょう。
・フィチン酸
全粒穀物や豆類に含まれるフィチン酸も鉄分の吸収を阻害してしまうことがありますが、調理や発酵させることで阻害を軽減できます。
・カルシウム
大量のカルシウムは鉄分の吸収を抑制させる働きがあるため、鉄分が多い食事とは時間をずらして摂取することをおすすめします。
・リン酸ナトリウム
インスタント食品やスナック菓子などに含まれる食品添加物は鉄分の吸収を阻害します。
【腸内環境を整える】
鉄分は私たちの体にとって非常に重要な栄養素ですが、その吸収には腸内環境も大きく関わっています。
腸内環境が悪いとせっかく届いた鉄分を奪ってしまうため、吸収が悪くなってしまいます。
そのために腸内環境を整え、鉄分の吸収を促進し、健康維持に役立てることが重要です。
【サプリメントの活用】
普段の食事だけでは不足しがちな鉄分を補うために栄養補助食品として、サプリメントを活用するのもおすすめです。
過剰摂取すると体に良くないので用法用量は必ず守りましょう。
5. この時期鉄分をお勧めする理由
夏になるとたくさん汗をかくため、体内の水分だけでなく、鉄分も失われやすくなります。
また、冷たい飲み物や食べ物を多くとると消化吸収が悪くなり鉄分の吸収率が下がる可能性があるので注意が必要です。
鉄分が不足すると体内のヘモグロビンが不足し、貧血症状が現れます。
水分、塩分の補給だけでなく鉄分もしっかりと補給しましょう。
夏に不足がちな鉄分を効率よく摂取するために次の事を大事にしてください。
・冷やしすぎない
体を冷やしすぎてしまうと、消化吸収を悪くする可能性がある為、暑いからといって冷たい飲み物や食べ物を摂取しすぎないように気を付けましょう。
・水分補給
汗をかいた後には、こまめに水分補給を心がけましょう。
・バランスのいい食事
食事をバランスよく摂ることで、鉄分だけでなく他の栄養素も一緒に摂取することができます。
特に鉄はたんぱく質+鉄の形で血中を流れています。
そのため、鉄だけ摂取してもたんぱく質が不足していると上手に働きません。
たんぱく質摂取不足に注意しながら食事を摂るよう心掛けて下さい。
これらは季節に関係なく心がけることができれば、より一層、健康維持が期待できます。
【参考情報】高品質タンパク質結晶生成実験『タンパク質って何?』宇宙航空研究開発機構(JAXA)
https://humans-in-space.jaxa.jp/protein/public/about/what.html#ctop
6.おわりに
鉄分は、私たちの健康維持に欠かせない栄養素の一つです。
当院では患者さんの生活に寄り添った栄養カウンセリングを行っております。
鉄分不足が気になる場合は、この記事を参考にまずはご自身の食生活を見直してみるのもいいかもしれません。
より詳しく知りたい方は当院の管理栄養士に相談してみるのはいかがでしょうか。