「味覚・嗅覚がおかしい」
「抜け毛が気になる」
「皮膚トラブルがある」
「男性不妊が心配」
このようなお悩みはありませんか?これらの原因は、亜鉛不足かもしれません。
1.亜鉛とはどんな栄養素?
亜鉛とは、体内の様々な酵素を正常に働かせるためのミネラルの一種です。
亜鉛は新しい細胞を作るために必要で、300種類以上の酵素に関わっています。
すべての細胞に存在し、金属酵素の構成成分となるとともに、酵素類とゆるく結びつき安定化・活性化に関与しています。
新陳代謝を活発にしたり、エネルギーを作り出すはたらきの他、ウイルスから身体を守るはたらきもあります。
また、亜鉛は舌や髪の毛の細胞だけでなく、免疫やホルモン、生殖機能にも深く関わっています。
【参考情報】分子栄養学-栄養素と生活習慣病の分子栄養学- (中川誠一 著 株式会社 光生館発行)
1-1.赤ちゃんにも亜鉛は必要
成長のために日々細胞分裂を繰り返す赤ちゃんは、亜鉛不足の影響を受けやすいです。
2500g未満で生まれた低出生体重児のお子さんは、亜鉛不足の可能性が高いです。
症状としては、体重の増加・身長の伸びの不良、食欲の低下があります。
そして、赤ちゃんにとって大変なのが、皮膚炎です。亜鉛が不足すると、お尻に湿疹ができて真っ赤になり、おむつかぶれのようになります。口の周りや指の間などにも湿疹が出るお子さんもいます。
1-2.血糖コントロールにも関係あり
亜鉛は、血糖コントロールにも関係しています。
糖尿病患者に亜鉛サプリメントを与えて空腹時血糖、HbA1c、血清インスリン及び血清亜鉛濃度への効果を分析した結果、亜鉛サプリメントの摂取は空腹時血糖の低値と関連が認められたことが報告されています。
亜鉛が十分にあることで、肝細胞へのインスリンの取り込みと分解が抑えられ、末梢でのインスリン量を保つことができます。
【参考情報】順天堂大学大学院医学研究科
https://www.juntendo.ac.jp/academics/graduate/med/research/labo/taisya_naibunpitsu.html
2.亜鉛が不足するとどうなる?
亜鉛が不足すると、様々なトラブルが起こります。
2-1.皮膚のトラブル
亜鉛が不足すると、皮膚の細胞分裂や、潤いを与えてくれるコラーゲンの合成がうまくいかなくなります。
それにより、肌の乾燥や傷の治りが遅くなり、皮膚炎の原因となります。
また、亜鉛はホルモンの合成にも関わっているため、不足するとホルモンがつくられず、肌の乾燥につながります。
2-2.味覚のトラブル
味を感じる舌の味蕾細胞には、亜鉛酵素が多く存在しています。
味蕾とは、味覚を感じる受容器です。
人には1万個あるといわれており、甘・酸・苦・塩の味をそれぞれ別個の味蕾が受容しています。
味蕾細胞は、約2週間のサイクルで作り替えられており、亜鉛は味蕾細胞を作る働きをしています。
そのため、不足すると味蕾細胞が作り替えられなくなり、味を感じにくくなります。その結果、味覚障害が起きてしまいます。
2-3.髪のトラブル
毛根の細胞分裂が低下して髪の毛が伸びなくなるだけでなく、脱毛の原因にもなります。
2-4.男性不妊
亜鉛は男性の前立腺に高濃度に存在し、性ホルモンの合成、精子の産生に関与しています。不足すると、思春期では性の成熟が遅れ、成人では生殖機能が衰えて子どもができにくくなります。
【参考情報】オーソモレキュラー栄養医学研究所
https://www.orthomolecular.jp/nutrition/zn/
3.亜鉛の摂取方法
亜鉛は体内で作ることができないため、食事やサプリメントで摂取する必要があります。
3-1.亜鉛を多く含む食品
亜鉛は、動物性食品や穀類に多く含まれています。
亜鉛を多く含む食品(1食当たりの含有量) | |
豚レバー | 5.5mg (1食80g) |
牛挽肉 | 4.2mg(1食80g) |
牡蠣 | 4.0mg(1食30g) |
ごはん(精白米) | 0.9mg(1食150g) |
カシューナッツ | 0.8mg(10粒15g) |
牛乳 | 0.8mg(1食200g) |
3-2.亜鉛はどれくらい摂取すればいい?
日本人食事摂取基準(2020年版)では、1日の摂取の推奨量は18~69歳の男性で11mg、18~69歳の女性で8mgとされています。
しかし、ストレスが多かったり、特に抜け毛やアトピーなど亜鉛不足の方は、1日60mg摂る必要があります。
亜鉛60mgを摂るのに必要な食材量 | |
牡蠣(1個20g) | 23個 |
和牛/肩赤肉(1皿100g) | 10皿 |
カタクチイワシ(1皿100g) | 15匹 |
1日にこれだけの量を摂取するのは難しいかもしれません。
不足分は、サプリメントからの摂取と併せるのがおすすめです。
【参考情報】日本人の食事摂取基準(2020年版)厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
3-3.一緒に摂る栄養素にも注意が必要
亜鉛には、皮膚細胞分裂を促す働きがあるため、同じく皮膚や粘膜の再生効果のあるビタミンAとともに摂取すると、働きがよくなるといわれています。
また、吸収率を高めるにはビタミンCやクエン酸、動物性タンパク質とともに摂るのがおすすめです。
反対に、亜鉛には銅の吸収を阻害する働きがあるため、サプリメントで多く摂取している方は注意が必要です。
【豆苗と牡蠣のソテー】
・材料 (2人分)
牡蠣 6個(120g)、豆苗 1袋(100g)、塩こしょう 少々、薄力粉 適量、塩 小さじ1/4、オリーブオイル 大さじ1
※レモンバターソース
レモン1/2個、有塩バター 10g、しょうゆ 小さじ1、塩こしょう 少々、
※牡蠣下処理用
塩 小さじ1、片栗粉 小さじ1
・レシピ
- 牡蠣の下処理をする。レモンはしぼっておく。
- 豆苗の根元を切り落とし、食べやすい大きさに切る。
- オリーブオイルをフライパンに熱し、牡蠣を蒸し焼きにする。
- 同じフライパンに豆苗をいれ、さっと炒め、器に盛る。
- フライパンにしぼったレモン汁、バター、しょうゆを入れ、弱火で煮込む。
- 塩こしょうで味を調えて、盛り付けて完成。
牡蠣には亜鉛が、豆苗・バターにはビタミンAが多く含まれています。
味付けで使用したレモンには、亜鉛の吸収を助けるクエン酸やビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンAやビタミンCと一緒に摂ることで、効率よく亜鉛を摂取することができます。
3-4.どんな人に亜鉛が不足しやすい?
加工食品をよく食べる方や、お酒をよく飲む方は、亜鉛が不足しやすいです。
加工食品の多くには体内の亜鉛を排出してしまうポリリン酸が含まれていることや、添加物やアルコールの消費に亜鉛が使われるためです。
ほかにも、肝臓病や糖尿病、腎臓病、透析を受けている方は、尿や透析液から亜鉛の排泄が増加し、亜鉛不足が起きやすくなります。
4.おわりに
亜鉛は、生命の維持や細胞の正常な分化に深く関わっています。
不足すると色々な病気の原因となります。
摂取方法に気をつけながら、積極的に摂取しましょう。