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必須アミノ酸の働きを知って効率よく取り入れよう

鈴木茉由(管理栄養士)

最終更新日 2025.3.17

人間の身体はたんぱく質からできており、髪の毛や爪、筋肉もたんぱく質です。
たんぱく質は複数のアミノ酸が結合することでできているため、私たちにとってアミノ酸は必要不可欠な存在です。

体内では常にたんぱく質の合成と分解が行われており、主にたんぱく質の合成にアミノ酸が関わっています。
たんぱく質の合成に必要なアミノ酸ですが、体内に蓄えておくことができないという特徴があります。

1.必須アミノ酸の種類


人の約60%は水分であり、次いで約20%はたんぱく質で成り立っており、たんぱく質は2番目に多い構成要素になっています。
そのため、身体をつくるためには食事などからたんぱく質やアミノ酸を摂ることが重要になっています。

【参考情報】『アミノ酸』e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-001.html

人間の身体は、20種類のアミノ酸からできています。
その中でも、体内で十分な量をつくることができない必須アミノ酸と、体内でつくることができる非必須アミノ酸に大きく分けることができます。

20種類のアミノ酸のうち、必須アミノ酸は9種類(小児は10種類)あります。

◆必須アミノ酸
体内でつくることができず、食事などから摂る必要がある。
・バリン
・イソロイシン
・ロイシン
・メチオニン
・リジン(リシン)
・フェニルアラニン
・トリプトファン
・スレオニン(トレオニン)
・ヒスチジン

◆非必須アミノ酸
体内でつくることができる。
・アルギニン※
・グリシン
・アラニン
・セリン
・チロシン
・システイン
・アスパラギン
・グルタミン
・プロリン
・アスパラギン酸
・グルタミン酸
※小児では必須アミノ酸に分類される

【参考情報】『必須アミノ酸と非必須アミノ酸』オーソモレキュラー栄養医学研究所
https://www.orthomolecular.jp/nutrition/amino2/

2.良質なたんぱく質とは


食品のたんぱく質に含まれる9種類の必須アミノ酸のバランスを評価する指標のことを「アミノ酸スコア」といいます。

食品たんぱく質に含まれる各必須アミノ酸を基準と比較したときに、全て満たしている食品はアミノ酸スコアが100となり、「良質なたんぱく質」と呼ばれています。
アミノ酸スコアが高いほど、たんぱく質の合成に効率よく使用することができます。

2-1.アミノ酸の必要量について

アミノ酸が身体にとってどのくらい必要なのかが明らかになっていないため、必須アミノ酸の食事摂取基準は策定されていません。

正確な必要量は明らかになっていないのですが、ストレス時、スポーツ選手、妊婦、成長期のこども、病気からの回復時、飲酒・喫煙時などは普段よりも必要量が増えることがわかっています。

2-2.アミノ酸の桶

基準を満たしていない必須アミノ酸があると、他のアミノ酸は必要量を満たしていても最も少ないアミノ酸の量までしかたんぱく質合成に利用することができない特徴があります。
このことをわかりやすく説明したのがアミノ酸の桶です。

桶いっぱいに水を入れたとき、1枚でも板が短いとそこから流れ出てしまい、最終的に板が1番短い所の高さまでしか水は残りません。
桶の板を必須アミノ酸に置き換えると、たんぱく質合成に利用できるアミノ酸は最も少ないアミノ酸の量までとなってしまいます。

最も不足している必須アミノ酸のことを「第一制限アミノ酸」といいます。

このようにアミノ酸が1種類でも欠けているとたんぱく質を効率よく合成することができないため、バランスよく摂取する必要があります。

動物性食品はアミノ酸スコアが高く、大豆やそば粉以外の植物性食品は低くなっています。
しかし、アミノ酸スコアが高い食品だけを食べるのではなく、植物性食品もバランスよく食べる必要があります。

例えば、白米や小麦は肉や魚などの動物性たんぱく質や大豆と一緒に食べたり、1日の中で動物性たんぱく質も植物性たんぱく質もバランスよく食べたりすることが大切です。

3.アミノ酸の効果

アミノ酸の効果についてご紹介します。

3-1.BCAAの効果

BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)は持久力アップや筋肉痛解消に効果があります。

筋肉の約40%はBCAAが占めているため、運動前の摂取は持久力アップ、更に運動前20~30分前の摂取だと筋肉痛も軽くなることが期待できます。

このときの理想的な摂取比率はバリン1:イソロイシン2:ロイシン1です。

【参考情報】『アミノ酸』オーソモレキュラー栄養医学研究所
https://www.orthomolecular.jp/nutrition/amino/

3-2.サルコペニアの予防

高齢になるにつれてサルコペニアになるリスクが高まるといわれています。
サルコペニアとは、筋肉量が減少することで、筋力や身体機能が低下している状態を表します。

サルコペニアは転倒や骨折と関係があり、寝たきりや介護に繋がってしまいます。
たんぱく質の摂取不足と筋力の減少に関連があることが報告されていて、たんぱく質のもとであるアミノ酸も筋力と関係があり筋力アップに効果があります。

食欲が落ちて、肉などのたんぱく質源を食べることができないと体重や筋力が落ちて低栄養になってしまい、低栄養状態が続くとサルコペニアになってしまいます。
高齢になると食欲や食事量の減少、食事から栄養素を消化・吸収する能力の低下によって栄養素を十分に摂ることができていない可能性があり、食事を食べることができていても気づかないうちに低栄養になっている可能性があります。

【参考情報】『必須アミノ酸によるサルコペニアの予防、治療』日本老年医学会雑誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/49/2/49_203/_pdf/-char/ja

3-3.食べ物の消化にも必要な必須アミノ酸

胃腸が弱く、「肉を食べると胸焼けや胃もたれをしてしまう」といったお悩みはありませんか。
実は、たんぱく質不足が原因となっています。

食べ物のたんぱく質は、胃や腸の消化酵素によって最終的にアミノ酸まで分解されています。
このたんぱく質を分解する消化酵素もアミノ酸から作られているため、たんぱく質やアミノ酸が不足している方は消化酵素も不足してしまい、たんぱく質を十分に分解することができなくなってしまいます。
たんぱく質の分解に時間がかかり胃腸への負担が大きくなることなどが原因で、肉を食べると胸焼けや胃もたれ、下痢の症状が現れてしまっています。

たんぱく質をしっかりと食べ物から食べられるようにするためにも、必須アミノ酸を補給して消化酵素をつくることができるようにする必要があります。

4.アミノ酸の摂り方


アミノ酸スコアが高いものだけで食事をするのは現実的ではありません。
では、アミノ酸を効率よく不足なく食べるためにはどのようにしたら良いのでしょうか。

4-1.食べ物を組み合わせて食べる

1つの食べ物から全てのアミノ酸を摂取することができなくても、複数の食べ物を組み合わせて食べることで不足しているアミノ酸を補い合うことができます。

例えば、穀類はリジンが不足しているため、リジンを豊富に含む大豆食品やアジなどの魚類と組み合わせるなどがあります。
例)納豆ご飯・卵かけご飯・おかかおにぎり・トーストと目玉焼き

4-2.サプリメントを活用する

食事だけで必要なアミノ酸を摂取することが難しい場合はサプリメントで補給することができます。

また、高齢の方、食事量が少ない方、肉を食べると胸焼けや胃もたれ、下痢をしてしまう方、胃腸が弱い方、消化器疾患を持っている方、ストレスの多い方はより多くのアミノ酸補給が必要です。

アミノ酸はたんぱく質と比較すると体内で分解する必要がないため吸収スピードが速く、吸収率も高いため、アミノ酸を補給できるサプリメントを活用することがおすすめです。

同じアミノ酸に特化したサプリメントでも種類が多くあるため、サプリメントを検討されている方は必ず専門家にご相談ください。

5.おわりに

アミノ酸はそれぞれ異なる働きがあります。
体内で十分につくることができない必須アミノ酸は、意識的に取り入れる必要があります。

必須アミノ酸は、偏った食事ではなく肉や魚、大豆食品など様々な食品を組み合わせて食べることで、効率よく体内に取り入れることができます。

健康で丈夫な身体をつくるために、必須アミノ酸を積極的に摂りましょう。

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