・「呼吸をする時にゼーゼーヒューヒューと音が出る」
・「咳が止まらず夜中に目が覚める」
これらは、典型的な喘息の症状です。
喘息は、空気の通り道(気道)が、炎症によって狭くなる病気です。咳や痰に加えて、息苦しさや喘鳴など、さまざまな症状があります。
<喘息症状が起きやすいのはこんな時>
◉夜間〜早朝にかけて
◉季節の変わり目など、気温差が激しい時
◉天気が悪い時や、変わりやすい時
◉疲れている時
◉風邪をひいた時
◉タバコの煙や強いニオイを吸った時
また、胸の痛みや喉に感じる違和感なども、喘息の症状のひとつです。
これらの症状を放っておくと、気道の粘膜に変化が起こり、気道が狭くなったまま元に戻らなくなってしまい、発作の頻度が多くなったり症状が重くなったりします。
最近では咳だけの喘息(咳喘息)も増加傾向にあります。
喘息は気管支の慢性的な炎症(赤く腫れ、熱を帯びて腫れた状態)によって発症します。
タバコやアレルゲン(ホコリ、ダニ、犬や猫の毛など)、ウイルス感染、ストレスなどが刺激となって炎症が起こることにより、咳、痰、呼吸困難などの症状が出るのです。
残念ながら現代の医学では喘息を完治することができないため、発作が起きないようにうまく付き合っていく必要があります。
喘息治療の基本は、吸入ステロイド薬を継続して使用することです。
吸入薬は肺や気管支に直接作用し、炎症を抑えるはたらきがあります。気道の炎症を抑えることで、喘息発作を未然に防ぐことができます。
「ステロイドを使うのが心配」という方もいらっしゃると思います。
しかし、吸入薬に含まれるステロイドの量は、内服のステロイドと比べて1000分の1程度とごくわずかであり、気道にのみ作用します。全身への副作用はほとんどないので、安心して吸入薬を継続していきましょう。
よく、症状が良くなってきたからといって治療を中断してしまう方がいらっしゃいます。しかしその結果、炎症のコントロールが不十分になり、以前より重症になることがあります。
気道の炎症は慢性的に続いているものなので、発作や症状がない時でも、定期的な治療はそのまま続けることが大切です。
重症化した場合、最悪のケースでは死に至ります。喘息による死亡の3割が、発作後1時間~3時間で亡くなる「急死」です。
日本では現在でも毎年1000人以上の方が喘息で亡くなっています。
喘息の患者さんにとって、最もつらい症状は発作ですが、発作をとめる薬だけで「自分はちゃんと治療している」と勘違いしている方も多くいます。しかし、発作のときの治療だけでは不十分なのです。
発作を抑えるのはもちろん大事ですが、一番大切なことは、「発作が起こらないように炎症をコントロールすること」です。
炎症に対する治療を行わなければ、発作が何度も何度も起こり、さらなる悪化を招いてしまいます。
治療によって上手にコントロールすることができるようになれば、気道の状態を観察しながら主治医の判断によって、お薬の量を減らしていくことも可能です。
ここまでのお話から、喘息には早期治療と継続治療が大事だということがおわかりいただけたと思います。
正しい治療を続けてきちんとコントロールができれば、発作の心配が減り、健康な人と変わらない生活を送ることができます。
夜の発作で眠れないこともなくなりますし、趣味やスポーツも楽しむことができるようになりますので、安心して治療を継続していきましょう。
東海大学医学部専門診療学系小児科学 教授
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